先日、ものづくりのメッカと言われる東京都大田区にある、とある町工場におじゃましました。
その会社(T社)は、いわゆる機械加工部品の受注生産をしているメーカーなんですが、小規模企業とはいえ、さすが大田区で生き残っている企業、下町ロケットの世界を実現している、かなりの洗練された組織だなと思いましたので、すごいポイントを3つ紹介します。
また、いくらすごいとはいえ課題もありますので、その課題も1つ紹介します。
すごいポイント①:人材採用に困っていない
昨今の人材採用事情で言えば、かなりの売り手市場であり、特に製造業は人材確保が困難てあると言われています。
これまでのお客さまにおいても、
「いい人が全然来ない」
だけでなく、
「そもそも募集をかけてても全然来ない」
ということでお悩みの企業はたくさんあります。
というか、そういう企業がほとんどで、その課題解決のための省人化を進めないといけない!という危機感を持っている社長さんが多いです。
ところが、T社の人材採用事情を伺うと、
「23名の応募があって、2種類の性格診断を実施して1名を選び抜いた」
とのことでした!
そりゃあいい人材が集まりますよね!
そこで肝心の23名の応募。どのように集めたかを伺ったところ、
「企業秘密で言えない(笑)」
とのこと。(チクショー!)
ただ、
「あれこれ試しながら蓄積したノウハウや繋がりで、最初からそうだったわけじゃない」
とも言っていましたので、やはり魔法なんかではなく、地道な努力が大事ということでしょう。
あとおまけではありますが、性格診断をしている理由は、
「素直な人材を見つけるため」
とのことでした。
技能を身につけていく、技術者として育てていくにあたり、“素直さ”が最も重要だと考えているとのことでした。
そのためか、離職率はほぼゼロに近く、ここ最近での退職者は5年前に1名いただけとのことで、完全に人材採用に成功していますね!
すごいポイント②:技術伝承がバッチリ!
この会社、従業員は全部で11名です。
いわゆる町工場の姿として想像できるのは、現場には年配の職人が多く、定年を迎えて「会社のために残ってる」みたいな人が多い現場でした。
ところが、この会社は、年齢層はベテランから20代前半の若手までまんべんなく現場で活躍していました。
技術の伝承に関しての考え方は以下の3つの要素のミックスです。
1.ベテラン技能習得のOJT
2.資格や検定を利用した基礎知識の習得
3.知識から得た発想を試させて失敗をさせる
そもそもいい人材を採用できているという点もありますが、入社後の教育方針に関しても各従業員に浸透しており、よくありがちな「人によって違う教え方」なんかもほとんどない、とのことでした。
その結果として、受注部品の生産に関しての主力は20代の技術者であり、ベテランはそれをサポートする側に回ることを多くしているとのことで、技術伝承のみならず、働く環境、延いては成長する環境としてはかなり理想的な現場を実現していると思いました。
逆はよく見るんですよね(苦笑)
ベテランが自分ができる仕事を抱えてしまい、若手がいつまで経っても次の技術にチャレンジできず、成長ができないだけならまだしも、モチベーションも失ってしまう現場。
ベテランは、自分の居場所の確保に一生懸命で、
「技術を盗まれたら、この会社に居場所がなくなる!」
って思ってしまうベテラン職人。
T社は、見事に逆をいっていました!
すごいポイント③:自社製の生産管理システム
さて、サポートに回ったベテラン従業員が何をしたか。
作業場の環境を整えるとか、技術を教えていくとかそんな当たり前のことは当然にやっているとして、その他にもとてつもなく重要なことをやっています。
なんと、自社の受注体系や生産プロセスに合った、生産管理システムを開発したと言うじゃないですか!
最初は、そのベテランがシステム開発したことを知らずに話を聞いていたので、てっきり社員の誰かが要件定義だけを手伝って、ベンダーに開発をお願いしたのかと思っていたんですね。
ところがどっこい、
「費用はいくらくらい掛かりましたか?」
と聞くと、
「いや、だから自社で作ったから費用は掛かってないよ」
とのこと。
それを聞いたときの私の最初の感想は、
『ITに詳しい若手の採用にも成功してるんだなぁ』
でした。
で、その話を聞いた後に現場を見学させていただいたところ、
「この人が先ほどの生産管理システムを作った人です。」
って紹介されたの人は、どう見ても年齢は50代後半以上!!
いや~、かなりびっくりしましたね。
聞けば、
「ExcelとAccessを応用して、作ったから誰でもできる!」
と豪語していました(笑)
課題:営業力
ここまで、すごいポイントを3つ紹介してきましたが、そんな企業でも課題はあります。
その課題は、ズバリ、
【営業力】
ものづくりが得意な日本企業にありがちな課題ではありますね。
マーケティング戦略の立案と実行が苦手。
ただ、そのことを自覚しており、現在の若手社員の中から営業にチャレンジしてみたいという人材がいるため、その企業の後継者に指名されている、28歳の女性(娘さん)とともに、営業面の課題をクリアして「企業秘密とも言えるノウハウ」を構築していき、事業承継も進んでいくのではのではないでしょうか。
おわりに
さて、皆さんの会社、あるいは、仕事で関わる協力メーカー等はいかがでしょうか?
私が見てきた中でも、この企業はかなりレベルの高い事例です。
こういった企業に対して、単なる“あこがれ”で終わるのではなく、具体的な目指す姿として参考にしていただき、製造業の発展に活かしていっていただきたいものです!
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