企業は人なり
製造業の現場も、どんどんIT化やオートメーション化が進む中ではありますが、そのITツールやロボットを使うのはやっぱり人です。
また、自分たちの製造の現場がそもそもどんな問題を抱えていて、その問題解決のためにはどんな課題があって、その課題をクリアするためにはどんなことが必要かを考えるのは、今後、AIが発展してもやっぱり“人”だと思うのです。
そんな人を確保するための方法は2つです。
・新規に採用する
・社内で育成する
ちなみに、新規で採用した人材を育成する方法もあるでしょう。
いずれにしても、そんな優秀な人材をいきなり外部から採用することは難しいため、社内での人財育成は製造業に限らず大きなテーマとして今も昔も、そして今後も変わらないと思うのです。
なぜ製造業の人財育成が難しいか
さて、人財育成が大きなテーマであることは認識しながらも、意識こそ積極的にしたいものの、足元の現場ではなかなか効率良く進められない現実があります。
これまでGEMBAコンサルティングが関わってきた内容を見ると、人財育成が進められない理由には、以下の3つがあるように思います。
・育成しようと思う人材がいない
・教えることができる人材がいない
・育成している時間がない
現代の中小製造業においては、これら3つのハードルをクリアしている企業はそう多くないです。
人財育成は、重要度は高くても緊急度を感じにくく、日常の生産活動の中にあっては優先順位が下がりがちです。
とないえ、企業の未来のために、自社内の業務効率化とともに社外研修や専門家の知恵を活用しながら人財育成進められない企業は未来がないと思うのです。
製造業の3段階の階層別育成法
「課長の育成をしてほしい」「主任の育成をしてほしい」「主任にするための育成をしてほしい」などなど。
コンサルティングをしている過程でこういったご依頼をいただくことがあるのですが、私は3つの階層に分けて考えるようにしています。
それぞれ、具体的にどのようなことをするのか紹介します。
段階①:新入社員→中堅社員
いわゆる係長以下の階層です。企業によって主任、班長、リーダーなど、呼び方はいろいろあると思いますが、現場の主力と考えていただいて良いと思います。
この階層の教育では、「知識の体系化」が重要だと考えています。
新入社員から実務の経験を積み、自社で担当してきた業務であれば一通りこなすことができ、現場レベルの判断もある程度できるようになってるという前提が必要です。
それまで、実際に実務を通して学んできたことを、改めて体系的に学び直すことによって、知識をより一般論に広げ、そして強固にしていく段階にあると考えています。
例えば、
・生産管理の基礎
・在庫管理の基礎
・生産技術の基礎
・品質管理の基礎
etc…
体系的にまとめられた知識を改めて学び直します。知識を体系化することにより、あらゆる状況下においても応用できる確かな知識に昇華すると考えているからです。
さらに、「リーダーや主任に求められる役割は何か」についても客観的に考えるため、課長やメンバーから求められる役割を可視化していきます。
そうすることで、自らの役割を明確にしていくとともに、自社にとってのリーダー像を作り上げて後世に残すことができます。
段階②:中堅社員→管理職(マネージャー)
いわゆる課長職です。
課長職は、経営層が考える企業の方針や課題を現場に落とし込み、実際に活動を進めていく責任が生じます。
主に以下の2つについて徹底的に考え抜いて、学んでいただくのが良いでしょう。
1.経営課題を現場課題に変換する
2.現場課題をタスクに分解し遂行する
その根底には、課長職には以下の能力が求められると考えているからです。
・経営層の方針を理解する力
・理解した情報を言語化する力
・具体的指示を伝達して組織を動かす力
いずれも欠かすことのできない力です。現場のプレーヤーが求められる力とは少し別物ですので注意が必要です。
スーパープレーヤーはスーパーマネージャーに非ず
肝に銘じておきましょう。
段階③:管理職(マネージャー)→経営層
ここが一番難しいポイントです。
製造業においては、外部から経営の専門家を採用することはあまりしないです。基本的には、自社の技術や現場の働き方を経験した人が、経営層に昇進するパターンがほとんどです。
ここで超えなければいけないハードルは、
技術者 → 経営者
であり、生粋の優れた技術者であればあるほど、この壁を超えられないというジレンマがあります。
さて、じゃあどうすればいいか。
・今の自社の経営課題がなぜそうなのかを理解する
・財務分析をしてKPIを決定する
・外部の人とたくさん会う
この3点を重点的にするべきです。
経営課題を理解するためには、SWOT分析・PEST分析・3C分析などの環境分析や、市場動向などの調査が必要になってきます。この過程を通じて、世の中の状況を踏まえた自社の置かれた状況を理解し、自社のビジネスを客観的に知る必要があります。
また、自社が目指すべき方向性に対するKPIを設定して現場の活動目標に掲げる過程において、経営、つまり企業の運営を知っていく必要があります。
さらに、外部の人とたくさん会い、自社の、あるいは自身の強みや弱みなどの輪郭をはっきりさせながら、情報発信や他社との関係性の構築など、外部との関係性を構築していくことが必要です。
技術者の枠を大きく超えるこのプロセスこそ、企業の将来を占う大切なプロセスになると考えています。
さいごに
ここまで、3階層の階層別の重要ポイントを紹介してきましたが、各企業、各部署で事情はそれぞれ異なりますし、抱えている人材の特性も当然違います。
従って、各組織の状態、企業の目指す方向性に合った方法を選んでいく必要がありますので、唯一の正解はないとも言えます。
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