ISO9001を活用した内部監査の進め方6つのポイント

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ISO9001を活用した内部監査の進め方6つのポイント

内部監査のやり方

この記事では、ISO9001の業務に振り回され、日ごろなかなか効果を感じられずになんとなく内部監査を形式的に行っている企業(主に中小企業)向けに、ISOの認証を維持しつつ効果的に内部監査を実施するやり方を解説します。

下記の関連ページと合わせてご覧ください。

動画でもISO9001に関する情報を解説していますので、ぜひご確認ください!

内部監査の目的

ISO9001の活用というと、

「めんどう」

「よくわからない」

「どうしていいのやら、、、」

といったようなネガティブな声が良く聞かれます。

しかしながら当社では、【内部監査の運用が大きなカギを握る】と考え、目的を持った内部監査でチェック機能を効果的に果たし、経営の成長に繋げてほしいと活動しています。

その理由は、

  • 企業自らの悪さ加減を自ら発見できる
  • 有効な対策の立案を促す
  • 対策の効果を検証して次のアクションにつなげる

というプロセスを回す “ドライビングフォース” となるからです。ISO9001の本質は、【継続的改善】にあります。これを行っていくためにも、内部監査を有効に行わない手はないのです。

そこで今回は、内部監査を有効に行うための6つのステップを紹介および解説していきます。

既に企業内で実施していること、実施していなかったことも含めて、良いと思ったところはどんどん利用してください。

下記の関連ページと合わせてご覧ください。

>>分かりやすい簡単なISO9001活用術~分かりにくさと3つの運用ポイント~

YouTubeにてISO9001の解説をしていますので、ご視聴のほどよろしくお願いいたします。

内部監査のやり方6つのポイント

それでは内部監査のやり方に関して、6つのポイントをご紹介していきます。

ポイント-1 入念な監査事前準備~内部監査計画の一番のコツ~

内部監査の事前準備

突然ですが、料理を提供するお店は、事前にお皿やナイフやフォーク、グラスなどを並べておくなどの準備をしますね?

何事も準備が大事で、この考え方は内部監査も例外ではありませんし、業務全般にも言えることです。

そこで、監査計画を立てる際の4つの要素を紹介します。

要素①:MHK

この言葉は一般的ではありません。当社が考える内部監査の監査計画に関する重要なポイントを示した造語で、

M:目的

H:範囲

K:基準

の略です。

どこかから拾ってきたような監査計画のフォーマットなどでも、このくらいのことは書くことになっていると思いますが、毎回コピペしていたのでは意味がありません。

その都度、何のために、どのプロセスを対象として、何を判断基準として監査するのかをディスカッションし、MHKを明確にしてください。

要素②:質問事項の検討

監査の場でいきなり質問事項を考えるなんて、野球で言えば素振りもしたことないのにバッターボックスにいきなり立ってボールをバットに当てようとするくらい無謀なことです。

直近で起きた問題や前回の指摘事項なんかも踏まえて、どんなことを質問するのかを予め考えておきましょう。

これは大企業では当たり前のようにやられているかもしれませんが、中小企業できちんと実施できている企業は少ないです。

内部監査員は、ある程度企業全体の業務を把握している中堅以上のメンバーになるため、監査対象の部門の業務も問題点も、頭ではわかっているつもりでぶっつけ本番に臨んでしまうのです。

そうしたカンと経験だけに頼らない品質マネジメントシステムを構築し運用することもISO9001の大きな目的であることを改めて理解しましょう。

質問事項を検討するということは、どのポイントを監査するのかを明確にする必要があります。

例えば、

・前回の指摘事項

・直近で起こった不適合(顧客クレーム/社内トラブルなど)

などが考えられます。

こうした監査のポイントをチェックリストとして用意しておくと良いです。

そのチェックリストに基づいて、疑問点や確認するべきことを監査の場で質問するようにしましょう。

要素③:計画書はきちんと作る

監査計画の計画書は、品質マニュアルではもちろんきちんと作成することされているはずですし、きちんと作成することが望ましいことは理解しているはずですが、意外と形骸化しがちです。

その理由は、中小企業では勝手知ったる職場、勝手知ったるメンバーで内部監査を行いますので、計画書にきちんと落とし込まなくても“阿吽の呼吸”で進めることがほとんどだからです。

監査計画書をきちんと作ることが大切なのは、次のポイント-2でも紹介しますが、被監査側に監査目的などの“MHK”や監査方法などを正しく伝える必要があるためです。

そして、次に別の内部監査員が監査する際に、計画と結果をきちんと振り返ることができます。

おろそかにせずにきちんと作りましょう。

要素④:全部やろうとしない

例えば、対象の被監査部門も複数の業務プロセスを持つはずです。

監査対象を「部門」とみるのではなく、「プロセス」と見ることで、監査範囲を明確に絞っていきます。

【対象の業務プロセスを決める】

それができないと、結局品質マニュアルの全範囲が対象となってしまい、非常に密度の薄い監査になってしまうでしょう。

そのために、過去の内部監査での指摘事項や直近で発生している不適合、および業務でのトラブルなどに着目し、対策をすることによる効果が大きい部分に関してMHKを設定して、質問事項を予め検討しておく必要があるのです。

多くの企業では、内部監査は年に1回実施していることと思います。

効果の大きい部分のみの監査を実施していても、毎年監査と改善を繰り返していれば十分に改善効果は得られますので、1回の監査で欲張らないことが監査の効率を高めるポイントです。

ポイント-2 監査計画の通知~抜けがちだけど重要~

監査計画の通知

内部監査の質を高めることももちろんですが、時間的にも効率的な監査を行うために、監査側が立てた計画(MHK含む)については予め被監査側に通知しておきます。

そうすることによって、被監査側は事前に資料を準備することができ、監査時間内に資料を探しに行くことや質問に対する回答にしどろもどろ、といった時間を減らします。

お店でも、看板やら主力メニューを表に出して、

「ウチはこんなお店ですよ!」

「今日のオススメはこれですよ!」

と出しておきますよね?

それと同じことです。

もしかしたら、

「あらかじめ通知したら、事前に対策打たれて客観的な監査ができないんじゃないの?」

という意見もあるかも知れませんが、それは違います。

具体的な質問事項や観察することなどを具体的に伝えるわけではありません。

被監査側に伝えるとしても、対象となる業務プロセスと質問のポイントくらいです。

むしろ、業務プロセスを明確にしてあげることで、プロセス自体に注目させ、振り返る時間を作ってもらった方が良いと考えています。

それに、そもそもISO9001の目的は継続的な改善です。

内部監査で不適合や改善の機会を指摘することが目的ではなく、結果として改善してくれれば良いという点も忘れてはなりません。

ポイント-3 被監査準備~事前に準備はしっかりと~

事前準備

このポイントは、被監査側の準備のことを指します。

予め対象となる業務プロセスが明確になっているのであれば、関連文書の準備は入念にしておきましょう。

看板を掲げているお店に行く際には、ドレスコード考えますよね?

フランス料理やイタリア料理店、中華料理店、和食店、近場の喫茶店、コンビニ、、、多少は服装や持ち物も考えるはずです。

内部監査もそれと同じです。

どんなことが監査されるのか、被監査側は通知を受けたら、その準備をして監査の場に臨みましょう。

この準備作業をきっかけにして、自らの“業務プロセス”を振り返るきっかけにします。

実は、普段の仕事は“作業”に注目されてしまいがちで、“業務プロセス”を考える機会はそう多くはないと思いますので、内部監査をチャンスととらえて前向きに取り組みましょう。

 ポイント-4 監査の実施~密度を最大限に高める~

密度を高める

さて、いよいよ監査です。

とはいえ、ここまでに実施してきた計画準備段階で、チェックリストも含めてやることはほぼ決まっています。

あとは、枠に当てはめて結果を作り上げていく作業になります。

その際に、このポイントで監査報告書に記述するべき2つの要素について見ていきましょう。

要素①:監査結果(結論)

まずはこれですね。

ここには、最低限以下の3つを盛り込みましょう

<監査結論>

・good point

・軽度の指摘(要観察事項)

・重度の指摘(是正事項)

さて、結論として軽度/重度の分け方はかなりグレーゾーンですよね?

ありがちなのは、明確に不適合にしたくない仲間意識から、すべてを軽度の指摘にしてしまうということです。

それでは内部統制が図られておらず、内部監査の意味がありません。

当社ではこの現象を【おままごと監査】と呼んでいます。

おままごと監査を防ぐために、指摘事項に関する判断基準を持ちましょう。

それはズバリ【問題になっているか】です。

社内業務においてトラブルになっていたり、顧客クレームになっていたりした場合には、明確に重度の指摘としましょう。

ここで、監査の目的に立ち返ります。

指摘されないことが目的なのではなく、品質や顧客満足を向上させるための業務プロセスの改善が目的でしたよね?

どこまで行ってもISO9001の目的が重要なのです。

要素②:結論の根拠を示す記述内容

監査内容に関する記述は、後から客観的に見てもスッと理解できる内容でなければいけません。

そのために、以下の点を明確に記述するようにしましょう。

<記述内容>

・計画面(そもそもISO9001や品質マニュアルではどうすることになっているか)

・運用面(やるべきことに対して実際はどうやっているか)

・証拠(ヒヤリングや観察された事柄がなんだったか)

この監査結果に関する記述のフレームは、今回の記事の中では最も重要な部分かも知れません。

この内容があいまいな場合、監査の質が低いと言わざるを得ないと考えています。

さらに言えば、監査員のレベルが低いということにもなります。

ぜひ、報告書のフォーマットに取り入れてみてください。

最後に、不適合もしくは改善の機会の指摘があった場合には、その対策を立案するまでの期限を決めましょう。

具体的な時間期限は、ものごとを確実に進めるためには必須です。

内部監査を無事におけることが目的なのではなく、内部統制が働いた内部監査を通じて品質マネジメントシステムの改善を実施することがISO9001の目的であることを繰り返しておきます。

ポイント-5 是正処置・観察事項報告~反省をしっかりと~

内部監査の反省をしっかりと

さて、監査が終わったら、指摘事項に対する対策を立案します。

これは、被監査部門である業務を実行する部署にて対策を立案しましょう。

例えば、数人で食事に行った場合には、

「あの店良かったよね」

「次はあれ頼んでみたいな」

「もうちょっと早い時間に行こうか」

と当日の帰りもしくは翌日に反省しますよね?

内部監査のやり方も全く同じなのです。

ありがちな良くない例は、内部監査の場で、監査メンバーや被監査メンバーみんなで対策を考えてしまうことです。

「これだと不適合に近いですねぇ」

「じゃあどうする?」

「いったんはこうしましょうか」

なんて会話を監査の場で始めてしまう。

これは非効率ですし、実際に監査に参画していない現場のメンバーの声を無視することにもなります。

なにより、その場しのぎの対策になってしまうことが多く根本的な問題解決に至らないことがほとんどなのです。

自らの業務プロセスを客観的に指摘してもらい、その客観的な指摘を素直に受け止め、根本的な業務プロセスを改善する対策を考えるのは、実行部隊の仕事です。

全てを事務局に押し付けない、自分のプロセス改善は自分で行う、そんな意識を醸成していきましょう。

ポイント-6 フォローアップ~やりっぱなしにしない~

内部監査の復習

さいごに、立案した対策が確実に実行されているか、必ずフォローアップしましょう。

被監査部門から提出された対策の書面だけを提出してそれで終わりにしていては、せっかくの監査、延いては自らの業務プロセスを改善する機会を不意にしてしまいますし、PDCAサイクルを止めてしまいます。

例えば、訪れた飲食店などのお店からダイレクトメールが来たら、

「あぁ、気にしてくれてるのね」

なんてなりますよね?

実行部門が自主的に立案した対策を、その予定通りにやっているのかどうかを確認したり、新たな課題があればそれに気づきを与えたりすることも大きな意味で内部監査の役割と考えます。

言ってみれば、内部監査の最後の仕上げ。

最後の仕上げの質が悪いばっかりに、内部監査そのものの質を台無しにしないでください。

おわりに~内部監査は正しいやり方で!~

内部監査は正しく

ここまで、主に中小企業を対象とした内部監査のやり方について紹介をしてきました。

一般的で抽象的な言い方をすれば、【ISO9001の有効運用】という言い方になるのかとは思いますが、そのカギは内部監査の質にかかっていると言っても過言ではないと当社は考えています。

難しい言葉を使えば内部統制、言うなれば【自浄作用】ですね。

問題を発見し、対策(仮説)を立案し、実行し、検証する。

こういったものが機能している組織は、継続的にどんどん改善を積み重ねていけるのです。

ISO9001は認証の維持にも運用にも工数や費用が掛かります。

しかしながら、ここで紹介した内部監査を始めとした運用の仕組みをうまく活用することで、品質保証体制の強化、改善の文化の醸成、延いては経営の安定化や成長、企業の強みの醸成にもつながっていきます。

ISO9001の運用に疑問を感じたり、効率的な運用にお困りの方は、ぜひこの記事で紹介した内部監査運用のポイントを活用してみてください。

ただし、内部監査の実施方法については、各企業個別の事情や業態などを踏まえなければなりません。

当社は、内部監査の立ち合いやその結果を基にした改善のコンサルティングも行っています。

ご興味がある方はぜひ一度お問い合わせください。

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著者

大原 健佑

出身:長野県長野市 最終学歴:東北大学 工学部 金属工学科 卒
保有資格:中小企業診断士・QMS審査員補/2015 (JRCA登録番号:A22594)(ISO9001審査員資格) ・QC(品質管理)検定1級 ・フォークリフト ・床上操作式クレーン ・玉掛け

ものづくり企業の生産性向上と人財育成を促進する専門家。
「現場が自ら動く!」「現場に任せる!」「業務改善を圧倒的に加速させる!」「技術開発を確実に進める!」をベースに、各ものづくり企業の業務改善プロジェクトに参画し、プロデュースを行っている。