情報管理領域でムダを見つける製造業コンサルタントの視点

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情報管理領域でムダを見つける製造業コンサルタントの視点

製造業のコンサルタント

製造業の情報管理におけるムダを発見し、改善案を提案していくにあたり、どのような目的で、どのような視点で現場を見ているのかを紹介していきます。

管理部門の仕事と一言で言っても、企業によって、生産計画立案、工場経理、ロジスティクス手配、材料調達といったことをひっくるめてやっていることもあれば、生産計画のみを行っていることもあるので客先ごとに確認する必要があります。

各現場での情報管理の方法を知りたい場合には、帳票に記載されている情報を記入している人を呼ぶよう依頼することがほとんどです。

例えば、作業実績のまとめは管理部門ではなく製造部門内で行っていることが多いですし、こうした間接業務にはムダが見つかることが多いです。

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目的

「情報管理を部門、部署間の壁を超えてスムーズに行っているか」

別の記事でも書きましたが、繋がっている業務フローではありますが、必ずフローの中に部署や部門の切れ目があります。

そうした業務フローの間、部門や部署の間というのは、ムダな作業が発生している可能性が高いです。

具体的にどんなポイントで見ているのかを挙げていきましょう。

情報管理で見るべきポイント

ポイント

作業日報や機械日報などの帳票が手書きかどうか

生産現場でほぼ必ず発生している作業日報や機械日報などの帳票ですが、この入力が“手書き”かどうかをまず見ています。

ここでいう“手書き”とは、Excelに自由記述で手入力しているような、情報がデジタル化されていない場合も含みます。

そして、各帳票に入力されていない項目、つまり空欄があるかどうかもここで確認します。

前提として、「手書きが全部NG!」というわけではないことだけは念を押しておきます。

まず空欄に関してですが、こうした空欄が頻繁にあるフォーマットを作成しているということは、管理面においてガチガチにやろうとし過ぎているケースが多くあります。

当然管理側からすれば細かく分けて情報を入力してもらいたいとは思うのですが、現場でその作業が負担になるために結局行われず、結果として情報の価値を現場が認識しないという悪循環に陥るのです。

過去のクレーム等の対策で、どんどん入力項目が増えてしまっているケースも見受けられます。

そうした現場は、

  • 本当に必要な情報は何か
  • その情報を得るための手段は日報などで手書きするしかないのか

を改めて考えるべきです。

現場で入力される帳票からは、管理側が何を管理したいのか、が半分は見えます。

それが、経営層への情報伝達に必要な内容になっているのか、あるいは、経営層が掲げている方針に沿った内容になっているのかを確認し、そのギャップがあれば改善点として提案します。

こうした作業日報などの帳票は、

  • 昔から形式が変わっていない(変えることをしていない)
  • 入力項目が増える一方

のどちらかになっていることが多いです。

これは管理側の思考停止ともいえる現象ですので、改めて管理側に何の情報管理をするべきなのかをゼロベースで考えてもらうきっかけにすると良いです。

部門間の報告データはきちんと連動しているか

もう少し専門的に言えば、

「データが全社でデジタル化されているか」

「一方のデータを変更したときに他部門のデータも連動するか」

ということでもあります。

「生産管理課で持っているデータと品質管理課で持っているデータの数値が違う!」

なんていうことはよくあることです。

ITに詳しい方であれば、こうした状況というのは、情報が一元化されておらず、完全性を保っていないということで、IT的にはNGな状態であることはピンと来ると思います。

  • 品質管理課で把握している不良発生率と製造課に残っている不良発生の記録が一致しない
  • 製造課に残っている作業時間実績と生産管理課で把握している製造能率が違う
  • 工務課で把握している設備不良と品質管理課で把握している設備不良による加工不良の量が違う

こうしたことは起こりがちではありますが、現場の一次情報を活用した二次情報を管理して改善や対策等に繋げるとすると、一体何を基準にしたら良いのか分からない状態になります。

そうなると、

「どうせ報告のためだけだから」

「形だけ作ればいいから」

というムダな情報整理業務が発生してしまうんです。

定例会報告資料がインプット情報を成形しただけかどうか

品質会議やTPM委員会など、定例会の報告資料(アウトプット資料)を見て、不良数等をただ集計したり、羅列しているだけではないかを確認します。

現場から得た一次情報を何かしらの視点を交えて分析し、その分析した結果を改善に活用していかなくてはいけないのですが、ただ、得た一次データをグラフにしたり、一覧表にしたりして、ただの報告になっている会議が非常に多いです。

報告だけの会議であれば、わざわざ主要メンバーが集まる必要はありません。

そこに何かしらの提案・提言があるからこそ、報告する人が直接的に声で訴える価値が出てくるのです。

インプット情報を成形しただけの情報であれば、ただ現場に掲示しておけばよいだけの情報に過ぎません。

また、なぜか、ただただ見せ方を変えただけの資料をわざわざPowerPointを使って作成したりしている企業も非常に多いです。

AmazonではPowerPointの使用を禁止にしているようですが、社内の報告で、特にプレゼン形式にする必要がない資料が多い企業は、その他の管理業務でもムダな作業を発生させてしまっている可能性が高いです。

定例会報告資料がppt資料か

ppt資料にする意味はあるのか

その資料を見る側のリテラシーも含めて、改めて考えてもらうと良いと思います。

現場からの情報収集物のやりとりは非効率でないか

いわゆる部署間の壁ですが、どのように管理側に情報を伝えているのかも、管理業務のムダを発生させているかどうかが分かります。

極端な例だと、現場で作成して印刷された作業日報や機械日報を、事務員が所定の現場の場所まで取りに行き、それを事務所に持ち帰って入力し直し、入力が完了した紙の日報を書庫に置きに行く。

というケースがあります。

また、そうでなくても、Excelで作成した日報関連のファイルをメールで毎日送っている。そのExcelを見て、必要な情報だけを事務員がシステムに入力している。

というケースもあります。

  • ムダな情報を記録させていないか
  • ただの転記作業をしていないか

etc…

今であれば、大掛かりなITシステムということもなく、RPAでも良いですし、Excelのマクロでも良いでしょう。

IT技術を活用した業務の効率化はいくらでも考えられます。

経営方針にマッチしていないKPIの報告資料を作成していないか

経営方針で掲げられているKPIが、現場にきちんと落とし込まれていない企業は思いの外多いです。

なぜそうしたことが起こるのか。

1つは、管理層のレベル不足です。

経営層が見えている景色が見えていないために、現場上がりの感覚だけで経営方針を解釈し、現場のKPIを勝手に設定してしまう。

もう1つは、それをヨシとしている経営層のレベル不足です。

特に中小企業では、現場上がりの経営に関してきちんと学んだことがない人が経営層にいるケースがほとんどです。

そうした人たちは、同じく素人の先人たちの経営を真似していきます。

そして、自分なりに思うところを素人考えで追加していきます。

これが現場レベルで如実に表れるのが、現場からの報告資料です。

「工場全体会議」や「品質報告会議」など、工場長への報告も含むこうした会議の報告資料は、過去から大きく変わっていないものが多いです。

経営方針や経営目標は毎年見直しされているにも関わらず、そのための方向資料の内容が変わっていないっておかしくないですか?

こうしたところに、経営方針や経営目標を意識した現場の活動ができているのかどうかが表れるのです。

不要なKPIのための不要な集計作業になってしまいます。

こうしたねじれが、事前の決裁者からのインタビューや、現場の報告資料からあぶりだされてくるんです。

ISOのための帳票作成がムダな作業になっていないか

「この帳票って必要なんですか?」

と聞くと、

「ISOだからやらないといけない」

という回答が返ってくるときがあります。

つまり、本当は不要だと思ってるけど、ISOのためにしょうがなく書いている。

ということですね。

ISOに関しては、かなりの方が誤解している点です。

そんな不要な帳票であれば、品質マニュアルを改訂し、帳票を作成しないことにすればよいのです。

ISO9001は多くの企業で導入されていますが、認証取得のラベルのための導入がほとんどでした。

その際に、ISO9001の導入コンサルを活用した企業は多いでしょう。

「コンサルにこれを書く必要があると言われた」

という思考停止状態でただただ作成している帳票も多いのです。

ISOの主旨は、

「ISOの基準に準拠してください」

ではなく、

「ISOの基準を参考に各企業の事情に合わせてルールを決めてください」

です。

ところが、認証取得を目的とすると、どうしても「これはやっておいた方が無難」というルールを作成してしまいます。

本当は、そのルールはもっとゆるくしておいても問題ないとしても。

こうしたムダに厳しいルールの積み重ねで、現場の生産以外の作業負担が増えている現場も少なくありません。

ISO9001に関して、きちんと理解している人が少ないことも原因の一つです。

ルールをゆるく設定し直すというのは、これまで認証を維持してきた企業からすると大きなリスクになります。

管理層は、正しくISOを理解し、正しく品質保証体制を維持しながら、正しく現場を効率化していくスキルが求められているのです。

おわりに

製造業コンサルタント

価値のない作業を失くすのであって、要らない人をあぶりだすのではない

さて、ここまで挙げてきた視点で作業のムダを指摘し、改善案を提案していると、どうしても管理作業に必要な人員の削減の話になってしまいます。

ここで言いたいのは、そのムダな作業をしていた人がムダだったのではなく、もっと価値ある仕事に人員を割けるようになるということです。

そのために必要なものは、“プラス方向の方針”です。

例えば、新製品開発でも良いでしょう。新規受注獲得のための営業活動活発化でも良いでしょう。採用活動に活かすためのSNS配信でも良いでしょう。従業員満足度向上のための場内環境整備活動でも良いでしょう。

そうした“プラス方向の方針”を掲げて活動していることが重要になります。

コスト削減等の“マイナス方向の方針”だけでは、作業を奪われた従業員は居場所がなくなり、組織として暗くなります。ギスギスしてもきます。会社の未来を感じなくもなります。

経営層は、常に“プラス方向の方針”も掲げましょう。

パーキンソンの第一法則

仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する。

これは、法則なのでどうしようもありません。

上記の“プラス方向の方針”がないと、作業を削減できたとしても、結局は人員の分だけムダな作業をまた生み出してしまうんです。

こういうお話を聞くことがあります。

「効率化して削減した工数で何か違うことをやろう!」

これでは全然ダメです。100点満点中2点です。

作業を削減してもまたムダな作業を生み出す現場が問題なのではなく、具体的な“プラス方向の方針”を掲げられない経営層のレベルの低さが問題です。

「何か違うこと」が何なのか、本来どうしていきたいのか、どんなことに時間を使っていってほしいのか、明確に示す必要があります。

管理業務の削減や間接作業人件費が減らないのは、案外これが原因なのではないでしょうか?

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著者

大原 健佑

出身:長野県長野市 最終学歴:東北大学 工学部 金属工学科 卒
保有資格:中小企業診断士・QMS審査員補/2015 (JRCA登録番号:A22594)(ISO9001審査員資格) ・QC(品質管理)検定1級 ・フォークリフト ・床上操作式クレーン ・玉掛け

ものづくり企業の生産性向上と人財育成を促進する専門家。
「現場が自ら動く!」「現場に任せる!」「業務改善を圧倒的に加速させる!」「技術開発を確実に進める!」をベースに、各ものづくり企業の業務改善プロジェクトに参画し、プロデュースを行っている。