中小製造業で離職防止をするための人事評価制度【4つのポイント】

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中小製造業で離職防止をするための人事評価制度【4つのポイント】

人事評価

中小企業も人を育て定着させる時代

いい人材が集まってくる、定着して順調に成長していく。

こんなうらやましいサイクルは大企業に限ったものではありません。

製造業の中小企業でも、このサイクルを確立している企業もあり、そんな企業が最も力を入れているものの一つが人事評価であると考えています。

「人事評価はそもそもしてなくて、定額の昇給をしている」

「過去から運用している評価表に基づいて考課だけはしている」

「人事評価制度をどのように設計するか分からないので、とりあえず面談は行っている」

などさまざまな会社様のご意見をお聞きします。

「ゴーイング・コンサーン」とも言われていますが、会社経営の大前提としては、会社は継続的に存続し続けなければなりません。

そして、会社が長期的に維持発展していくのに人材の育成・定着は欠かせません。

ましてや、人材不足により機会損失が拡大した結果業績が悪化し、最悪の場合は倒産まで追いやられるケースも増えてきました。

「ウチは辞めても辞めても人が入ってくる」

という会社もあるかもしれません。

しかしながら、日本の若者の人口減少は顕著で、これはゆるぎない事実です。

高度経済成長期から平成の時代までは人口ボーナス(労働人口が増加している)期でしたが、

これからは人口オーナス(労働人口が減少していく)期に入ります。

企業としては、着実に社員をいい人材に育て、定着させることが今まで以上に大切になってきます。

そこで、当社がこれまでに関わってきた企業(主に製造業)の中で、うまく人を育て、定着させ、事業を着実に伸ばしている企業に共通するポイントを紹介していきます。

少し余談にはなりますが、厚生労働省の発表によると令和2年度の3年以内の離職率は大卒で31%、高卒で37%にも上ります。

それだけ、定着率が低い時代になってきたということです。

ただし、この定着率の低下には複合的な要因はあれど、人事評価に力を入れることで定着率が上がるというのは間違いないと考えています。

「人事評価なんて、ウチはそんな制度を作るためのお金を払う余裕がない」

という声もよくお聞きします。

ですが、、一度出来上がった人事評価制度とその改善のサイクルは、会社にとって資産となります。

そして、その資産はレバレッジを利かせて定着率の向上と新規採用のコスト削減という結果につなげることが可能です。

特にZ世代といわれるこれからの働き手である若い人たちが顕著なのは、給与の高さよりも、

  • やりがいやしっかり自分を評価してくれているという承認や納得感
  • 自分が成長できている環境なのかどうか

を大切にしていると言われており、まさに人事制度設計が大切になってくるのです。

製造業の辞めない人事評価制度の4つのポイント

辞めない人事評価

さて、企業が人材の定着のために人事評価制度が重要になってくる背景を踏まえた上で、人が育ち、辞めない人事評価制度のポイントを紹介していきます。

その4つのポイントは以下の通りです。

・業績に準じた評価を作ること。(そんなに給料あげて大丈夫!?)世間の評価とズレがないこと。

・活躍した人がきちんと評価されること。=評価側の教育

・採用に気を付けること

・お金をかけること

それでは、詳細について紹介していきましょう。

辞めない人事制度POINT①:業績連動型の評価のコツ

「お金がないから給料を上げられない。」

それは意外と社員の方も分かっているのかもしれません。

しかし、明確な基準があれば納得するものの、

「業績悪いから仕方がない」だけでは違うところに目が向いてしまいます。

「自分は給料が安いのに社長がいい暮らしをしているのはおかしい」

などと悪いところに目が行ってしまったり、他人の環境にマイナスな目線を向けてしまったりしてしまいがちなものです。

しかし、従業員個人個人の階級や役割および言動に対する明確な基準があれば「自分ができていないから」「できるためにどうすればいいか」という思考になります。

そこで、業績をしっかり分析して労働分配率を考える必要があります。

労働分配率とは、人件費と業績の割合を指しますが、「御社の労働分配率はいくらですか?」と聞くとスムーズに答えられない社長さんが多いで、当社の体感的には70%を超える企業が答えられないのではないかと考えています。

「この業績ならいくらまでなら支払えるのか」と経営数字からの目線で考えれば、裏を返せば「給与を上げるためにどのような成果を出せば良いのか」という経営戦略につながります。

業績を向上させてくれる優秀な人材に対して、その分の給与を支払うのは企業として当然ですし利益がマイナスになることはありませんから、難しくない判断です。

一方で、業績に寄与していない社員に対してはお金を払いたくないことも事実ですよね。

そこで、定性的評価(数値化できないもの)を交えつつも、業績に関連する重要な数字(KPI)をその人はどれくらい達成したらどのくらいの給与になるのかを考える必要が出てきます。

詳細は割愛しますが、目安としては、その人の給与がその人のもたらす粗利益の3分の1を上回らないようにするのが一般的です。

そのあたりを目安に人事制度を設計すると会社にも無理のない本人のモチベーションを下げない設計ができるはずです。

当社では、財務分析も並行しながら行い、経営数字と連動した数値で人件費を考え、人事評価制度を構築することができます。

同時に、経営目標を達成するためにどのように現場運営を変えていかなければならないのかの施策も検討することができ、人事評価における考課基準の作成も行うことができます。

そして、業績連動型の評価は、賞与に反映させるようにすることも当社の考えかたの特徴です。

業績連動型とは、言い換えれば過去の実績に対する評価を反映させるということです。

過去の実績に対する評価の反映は賞与に限定して行うのが良いでしょう。

反対に、未来の期待は給与に反映させるようにします。

過去の実績と未来の期待を分けて考えることで、人事考課もしやすく明確な評価基準を作成することにもつながります。

辞めない人事制度POINT②:納得感と成長の両方にこだわる

人事評価

最初にお伝えした、辞めない/人が育つというのは、納得感と育成をどのように行っていくかと言い換えることができます。

詳細な内容は企業ごとの事情も異なりますので、ここではポイントだけお伝えします。

まず納得感です。

これは、「自分がこれくらい頑張った」という“自己評価”と“他者評価”の乖離が少ないということです。

そのためには、運用している人事評価制度そのものが妥当なのかどうかを検証し続けなければなりません。

自己評価と会社の最終評価のズレを少なくするためには、評価項目をわかりやすく具体的に簡潔に作ることが大切です。

そして、どういう状況になれば評価されるのか、最初に認識の共有をするとよりイメージがつきやすくなります。

注意点として、評価項目の明確化と認識共有と同時に、評価者の育成が不可欠であることは付け加えておきます。

人事評価の結果を従業員に伝えることは、社員同士でお互いの給与や評価を共有しあうリスクもあります。

「あいつと比べて自分がこの評価になるのはおかしい」と思ってしまうと、モチベーションの低下から成長を止めてしまい、最悪の場合は退職につながってしまうこともあります。

評価項目に何を入れれば的確なのか、どれくらいやればどのくらいの評価をするのが的確なのか、評価者側が感覚的なものに頼らずに評価できる明確な基準を作りつつ、より高いレベルでの評価面談の実施が求められます。

当社が支援を行う場合、人事評価制度構築の評価項目の設定だけではなく、従業員のメンタルケアとともに評価者の継続的な育成を行っています。

当社や当社パートナー企業と連携しながら、面談実施方法の指導やコーチングなどを実施して伴走支援をいたします。

この継続的な伴走支援を行うことで、人事評価制度やその運用の改善を継続的に行うことができ、レベルの高い人事評価制度の構築につながっていくのです。

ただし、制度面でこれだけ充実させても、退職する人は退職します。

なぜなら、退職する人は他に転職する人が大半なので、現在の会社以外の別の会社の求人条件と比較するからです。

かといって、企業側からすると無い袖は振れません。

そこで、今以上に業績を向上させていくためにはどうすれば良いのか、その業績を実現させるために具体的に何に取り組んでいけば良いのか、そのための課題は何か、課題解決の手段はどんな方法があるのか、など、当社では、経営戦略や経営計画の立案から具体的な個別課題の設定や課題解決の伴走支援までを行います。

人事評価制度の構築に関しては多くの人事コンサル会社などが行っていますが、経営全体から具体的な中身までを一貫して支援できるのは、「経営と現場をつなぐ」のコンセプトを掲げ、製造業の技術的な知見を持つ当社ならではと言えます。

辞めない人事制度POINT③:御社で採用するべき人はこんな人

人事評価

ここまでは、人事評価制度の作り方に対する考え方を紹介してきました。

構築した人事評価を納得して運用し、会社や従業員の成長のビジョンを描いてもらうためにも、最初の採用でミスマッチを発生させないことが肝心になってきます。

「御社で採用するべき人はこんな人」

と言われて、明確にお答えできるでしょうか。

「一生懸命に頑張る誠実な人」など誰もが当てはまる言葉でなんとなく採用してしまっているかもしれません。

一般的に中小企業より離職率の低いと言われている大企業の例を参考にすると、大企業では、採用時点で採用する人物像が明確な文章で伝えることができている企業が多くなっています。

そして、その明確化された人物像は各企業で異なっており、どの企業も同じ言葉にはなっていません。

優秀な学生がA社は採用で見送りになったものの、B社では内定をもらえた。

というように各企業において採用基準はさまざまです。

当たり前といえば当たり前ですが、各企業の採用活動においては、かなり精度の高い人事評価を行っています。

では具体的にどう行っているか。

まず採用情報をたくさんの人にリーチさせ、多くの応募を得ることが大切になってきます。

こちらは当然で、多くの候補者の中から選考を行う方が自社にマッチした人材を選ぶことができる可能性は高まります。

当社においても、パートナー企業と協力して、求人票の書き方や書くべき情報の精査を行っています。

そして、求職者が集まったならば、どうそこから選考するのかということが次に大切になることです。

ここでも評価面談と同様に、面接担当者の教育が必須になってきます。

当社においては、経営と現場をつなぐために、面接担当者の経営方針に対する理解を深める教育支援を行っています。

そして肝心の採用基準については、言葉で表すとシンプルで、

「自社で長く活躍している人と同じ属性の人を採用しましょう」

ということです。

「そんなことならとっくに考えてやっている」

と思う方も多いかもしれませんが、実は大企業のほとんどが、この「長く活躍している人=ハイパフォーマー」の属性を客観的に把握しています。

その属性を適切に把握する方法が適正テストと面談です。

このハイパフォーマーがどういう人なのかまず適正テストで適正をみます。

そうすると、例えば「思考力は少しかけているが、それを補う行動力がある」などの特徴が分かってきます。

この適正テストによって、誠実な人というポテンシャルすら見破ってしまいます。

こうした特徴が分かると、それぞれの職種のハイパフォーマーの特徴に近い人を採用するとその人もハイパフォーマーになる可能性が高まります。

ハイパフォーマーの適正、それがつまりあなたの会社が採るべき人材なのです。

間違っても、今の自社にはいないような優秀な人材を取ろうとはしないことです。

勘違いしてはいけないのが、この適正テストは人の優劣を見るものではありません。

あくまでもその考え方などの特徴を知るためもので、自社にマッチした人材なのかを見極めるために実施することを忘れてはいけません。

こんな失敗事例があります。

実は私が採用した人で、すごくいいなと思っていた人がいたんですが、入社して様子を見てたら、どうにも解せないことが起きてきたんです。

そのとき、適正試験をやってみたら嘘をつきやすいと出ていたんですね。

でも面接をした際の自分の感性でその人を採用したんですが、現場では本当にいろんな嘘をついていたようで、上がってくる実績も信用できなくて、結果的に現場の居心地も悪くなってて辞めてしまったんです。。。

辞めない人事制度POINT④:育成コストを捻出する

人事評価

「外部での研修はほとんどなくて、OJT(現場で育成)!」

中小企業ではよく見る実態で、特に製造業では現場作業を中心とした実務経験を重視するあまり、体系的な知識を身に着ける機会を設けていない会社も多いです。

みなさんの会社はいかがでしょうか??

上述した、Z世代の若者たちは本音では、

「習ってないからできない」と思ってたり、「ちゃんと教えてくれない」と裏で愚痴をこぼしていることもあるようです。

確かに、中小企業は大企業と比べると、研修や設備にかけることができる費用には限りがあります。

税金も社会保険も上がり物価も上がり、よりコストを捻出することはより難しくなりました。

そうした状況下において、政府も人材育成やリスキリングを非常に重要視しており、人材育成やDXについてはいたるところで発信されています。

厚生労働省が実施する助成金事業では人材育成のための助成金がたくさんありますが、研修を受けることができる助成金制度も年齢や経験の撤廃などかなり広がっており、人材育成の支援をする政府の本気度が窺えます。

そして経済産業省が実施する補助金については、ITシステム導入などにも活用できる補助金があるなど、各自治体に配布されている予算からも活用できる制度が拡充しています。

特に助成金の活用では、新入社員研修はもちろん、定期的なスキルアップ研修や新しい担当を作るための研修費用も対象にすることができます。

また補助金活用では、基幹システムや設備に投資することで業務効率化を推進し、労働生産性をアップさせることができます。

労働生産性が上がれば利益も拡大するため給与も上げることが可能となるとともに、残業も削減することができ、より働きやすい職場を実現することでより離職率を低下させることが可能です。

GEMBAコンサルティングでは、各会社の状況やこうありたい目標にマッチした最新の助成金や補助金の情報提供からサポートまで、パートナー企業と連携しながらワンストップで行います。

おわりに

人事評価

いかがでしたでしょうか。

人事評価制度の構築(再構築含む)は、人材育成/人材採用だけでなく、企業の経営に関わる重要な要素となります。

紹介した4つのポイントを抑えることで、「人が辞めないで育つ会社」を実現し、企業が継続的に存続/成長していく基礎を築くことができます。

製造業は、従業員個人の業績への寄与の評価が難しい業界ですが、経営方針から現場への一貫した認識の共有を図り続けることで、改善を繰り返しながら評価制度も成熟させていく必要があります。

経営から現場の具体的な活動までを一貫して対応することができるのは、GEMBAコンサルティングの強みです。

人事評価制度の構築とともに、経営戦略や現場改善の同時進行などを行っていきたいなど、お困りごとがありましたらぜひご相談ください。

企業様の状況や課題に応じて、パートナー企業との連携も含めて、ワンストップで対応させていただきます。

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著者

大原 健佑

出身:長野県長野市 最終学歴:東北大学 工学部 金属工学科 卒
保有資格:中小企業診断士・QMS審査員補/2015 (JRCA登録番号:A22594)(ISO9001審査員資格) ・QC(品質管理)検定1級 ・フォークリフト ・床上操作式クレーン ・玉掛け

ものづくり企業の生産性向上と人財育成を促進する専門家。
「現場が自ら動く!」「現場に任せる!」「業務改善を圧倒的に加速させる!」「技術開発を確実に進める!」をベースに、各ものづくり企業の業務改善プロジェクトに参画し、プロデュースを行っている。