とある製造業のお客さまから、こんな質問をいただきました。「製造業の人事評価ってどうやってやるんですか?」と。
その方(Aさん)は、銀行を定年退職され、その後その企業の嘱託として、別視点から改善・改革を進めていく役割を担っており、そのうちの一つが人事評価制度の刷新でした。さて、Aさんは人事評価制度・人事評価システム刷新に当たり、どのようなことを感じたのでしょうか?そして、人事評価制度がうまく運用できない理由はどこにあるのでしょうか?
今回は、その辺りを具体的に探っていきます。動画にて人事評価制度について解説していますので一緒にご確認ください。
目次
製造業の人事評価システムは難しい?
上述しましたが、Aさんは元銀行員です。しかも、その銀行は第一地方銀行であり、規模も大きく、もちろん人事評価制度もきちんと構築されていました。任命された当初は、そんな完成された人事評価制度を踏まえて、製造業に少しモディファイしていくことを考えていたようで、中小企業であればより簡素な人事評価システムにすることで対応できると考えていたようです。ところが、こんな壁にぶち当たりました。
「個人をどうやって評価するの?」と。
そう、銀行員、特に営業部門では、お客さまとの契約件数や売上金額など、“数字”で個人を評価しやすいのに対して、製造業では組織で製造をしているため、各個人をバラバラに評価することが難しいのです。
例えば、生産量が増加したことに対する評価を人事評価として取り入れたい場合、具体的に誰がどのくらい生産量の増加に貢献したのかを客観的指標を用いて評価することはできません。
同様に、改善を実施しているからと言って、その改善が直接的に企業の業績にどの程度貢献しているかを数値的に評価することはほぼ不可能と言って良いでしょう。
こうした現場を目の当たりにし、製造業の人事評価システムを構築することが困難で、何から取り組んだら良いのか分からなくなってしまったのです。
人事評価システムに関しては、製造業に限らず「うまくいっている!」と自負を持っている企業は多くありません。
従業員が多くない中小企業でも、最適な人事評価システムを常に模索しながら毎年の人事考課に臨んでいます。
人事評価システムがうまく機能しないと、適切な評価をすることができずに従業員のモチベーションが下がり、従業員の定着率が下がったり生産性が下がると考えられていますが、それではまず、なぜ人事評価システムがうまく機能しないと思われてしまうのか、その原因を探ってみます。
人事評価システムがうまく機能しない5つの原因
当社がこれまで人事評価制度に関する相談を受けた中で感じたことや、さまざまな方面での学習をまとめると、人事評価制度がうまく機能しない原因は大きく5つあると考えております。
人事評価制度がうまくいかない原因①:「神への冒涜」
『「人間が人間を評価するという行為は神をも恐れぬ行為である」とすら考えている。「そんなことできるわけないし、やるべきでもない」との傍観すらもつ。だが、組織の中で「上司」である以上、人事評価という「神への冒涜行為」は不可避である』
これは、松井証券の元社長松井道夫氏が、書籍『好き嫌いで人事』(日本実業出版社)で著している一節です。
人事評価について頭を悩ませた結果、このような結論に達していることからも、人が人を評価するということは神への冒涜であり、本来は人が運用してはいけない制度が人事評価なのだと考えれば、うまくいくはずがないのです。
人事評価制度がうまくいかない原因②:そもそも難しい
元も子もないようですが、人事評価制度をシステム的に運用することはそもそもが難しいと言えると考えています。
これは、稲森和夫氏も「人を評価するということくらい難しいことはない」と考えていたことは有名な話であり、複数の著書にもこのことについて触れられています。
京セラを一代で築き上げ、JALを再生に導いた稲盛和夫氏でも、人の評価を難しいと感じており、人事評価制度がそもそも難しいシステムであることを物語っていると言えます。
人事評価制度がうまくいかない原因③:認識がずれている
人事評価制度のお悩みを伺っていると、社長や担当部長の認識がずれていると感じる点がいくつかあります。
その筆頭は、「正しい人事評価制度を導入したら従業員のモチベーションが上がる」です。
結論から言えば、人事評価制度を構築したり改良したりしても従業員のモチベーションは上がりません。
正確に言えば、従業員のモチベーションを下げる原因の除去にはなり得ます。
少し専門的な話になりますが、ハーズバーグの動機付け・衛生理論では、人事評価制度は「仕事に対するやる気をなくす衛生要因」であり、「仕事のやる気を増大させる動機付け要因」ではないとされています。
また、「従業員のモチベーションと紐づけて業績が上がる」という誤認識もあります。
業績を上げるためには、売上向上施策とコスト削減施策があり、例えば事業開発や商品開発、マーケティングなどで売上を向上させたり、DXや業務改善/業務プロセス改革、経費削減などの活動でコスト削減をすることで業績が向上します。
これらの活動は経営者や部長などの権限において企画検討および実行されるものであり、人事評価制度が与える影響は皆無に近いと考えています。
「きめ細かく評価ポイントを明確にして公開すると、その評価ポイントに向かって従業員が頑張るようになる」といった解釈も誤解です。
たしかに、公開された人事評価のポイントがある従業員にとって達成可能なものだった場合、その従業員は頑張るかもしれません。
しかしながら、従業員全員が達成可能な評価ポイントを作ることはほぼ不可能です。
結果として、一部の従業員はモチベーションを保てるかもしれませんが、それ以外の従業員は「自分の給料を上げる気はないのか」とかえってモチベーションを下げてしまうでしょう。
こうした人事評価制度の導入に関する認識のずれも、人事評価システムがうまく機能しないと思わせる原因になっています。
人事評価制度がうまくいかない原因④:全員の昇給の期待には応えられない
「頑張っている人には報酬で報いたい」と考えるのは自然なことかもしれません。
しかしながら、全員が頑張っていると評価される人事評価システムを作ることはあり得ませんし、仮に頑張っている人を評価するシステムが出来上がったとしても、全員が頑張ってしまったら全員にその報酬を与えなければならないため、報酬の原資である利益の“パイ”を考えても一部の人には報酬を与え、一部の人の報酬は下げる、という制度にせざるを得ないことは、冷静に考えれば分かることです。
結果として、一部の従業員には報い、一部の従業員には報いることができない人事評価制度をなってしまうのです。
人事評価制度がうまくいかない原因⑤:企業理念や社是に賛同しない社員がいる
こちらも残酷な現実ですが、従業員全員が企業理念や方針に賛同し、行動指針を常に意識して行動しているわけではありません。
中には、「給料だけもらえれば良い」「好きなことがやれれば良い」「自分なりに楽しく過ごせれば良い」などと考えている、いわゆるモチベーションの低い従業員もいるでしょう。
人事評価制度は、企業理念やミッションやビジョンに賛同し、企業が進む方向に力を貸してくれる従業員を評価するために作る制度です。
そのため、そもそもモチベーションが低かった従業員を救済する意味は持ちませんので、より一層モチベーションを下げることにもつながってしまうものです。
こうした従業員のモチベーションを上げようと人事評価制度を導入しても、うまく機能するはずがないのです。
イケてない人事評価システムに欠けているもの
さて、ここまでは人事評価制度そのものに対して、うまく機能しない原因を探ってきましたが、ここからはさらに、一般的な人事評価制度・人事評価システムがイマイチイケていない、上司のさじ加減一つでどうにでもなってしまう制度になってしまっている理由に迫っていきます。
イケていない人事評価システム①:評価表がナイ
人事制度において、評価表は必須です。これがないということは、かなり基本的なところから頑張らないといけません。とはいえ、先代が一代で築いてきた企業であったり、とにかくがむしゃらに売上を作ってきた会社にとって、こうした制度の構築が遅れることも仕方がないと思います。カリスマ的な社長がリーダーシップを執り、従業員もその社長に従ってきたので、その社長の評価が絶対だったわけですから。
ただ、やがてはそうした企業も次世代の経営者に権限を委譲していかなければいけません。その際に、従業員評価の基準となるものがないと、経営者の好き嫌いで評価されていると思われてしまいます。このような企業としての人事評価の標準化という意味において、評価表はとても大事なモノなのです。
イケていない人事評価システム②:業務定義書がナイ
「業務定義書」
聞き慣れない方も多いかもしれませんが、読んで字の如し、業務を定義したものです。各部門や担当の業務を文字として定義し、それぞれの従業員が何の仕事をすれば良いのかを明確にする意味があります。ポイントは、文章・文字として明文化され、誰もが同じ解釈ができるようになっていることです。
口頭で言うだけではダメです。
文字で書かれているからと言って、いろいろ解釈ができてしまうようなものもダメです。人によって、「ここまでは自分、ここからはあなた」というある程度の線引きに関する認識が共通にならなければいけません。
人事評価という点においては、自分が求められている仕事が何かわからなければ、従業員は何を期待されているか分かりませんよね。従業員に何の仕事を期待しているのかを伝える必要があるのです。
イケていない人事評価システム③:キャリアパスがナイ
これも意外と多いパターンです。従業員がモチベーションを失うときの言葉として
「このままやってて自分はどんな人間になれるんだろう?」
「このあと自分は何がどうなることを目指せばいいんだろう?」
というものがあります。つまり、今後の自分のキャリアの見通しができなくなることがあるんですね。
もう一つ。例えば、最終出来に部長になるとして、それまでの道のりはどういう道のりがあるのでしょう?
少し具体的な製造業の事例で考えてみます。スタートが製造課の担当、ゴールが工場長だったとします。製造課の担当として技術を身に付けていった先に、現場の班長などのリーダーがあるでしょう。そのリーダーとして、生産実績管理や情報伝達、現場の改善などの管理スキルを少しずつ身に付けながら、次は係長になります。
製造課の係長として、製造課員のマネジメントや品質保証などのシステムなどを学んでいきます。
さて、その次は何があるでしょうか?
そのまま製造課長になるのでしょうか?
それとも、品質管理課にいって品質保証の全体のシステムを学ぶのでしょうか?
あるいは、生産管理課にいって工場の生産計画立案などの上流工程を学ぶのでしょうか?
はたまた、生産技術部にいって現場の生産効率化について学ぶのでしょうか?
事例をたくさん上げてみましたが、明確な正解があるわけではありません。
大切なことは、企業としてどんなビジョンを掲げていて、そのビジョンに連動した人材計画があって、どんな知識や経験を身に付けた人に工場長になってほしいのか、企業側が示してあげなければいけないということです。
このキャリアパスがないと、人事評価の肝となる評価表の設計も、本来はままならないでしょう。
よくある失敗パターン
パターン1:評価表の項目に腹落ち感がナイ
社外の研修等で学んだ方法を用いて評価表を作成しても、学んできた評価表はごく一般的なもの。そうした一般的な項目で評価する際に、
「ん~、ウチはこれって当てはまるのか?」
という疑問が、考課者にも従業員にも生じることがあります。そうなると、人事評価の制度そのものが軽視され、意味をなさないものになってしまうんです。従って、あくまでも各企業のビジョンや経営計画と連動したものになっていないといけません。
パターン2:業務定義書もキャリアパスもないのに評価表に基づいて評価する
評価表だけがあっても、決して良い評価制度にはなり得ません。それでは、なぜこうした失敗が数多く存在するのか。1つは、評価表を作ること自体は難しくないということがあります。インターネットから無料でテンプレートをダウンロードできたりもしますし、人事系コンサル会社では評価項目もある程度標準化されて、各企業でカスタマイズして導入するところもあります。
もう1つは、業務の定義を明確化することやキャリアパスを見える形で整理することが難しく時間がかかることがあります。
「〇〇課の業務はだいたいこういうこと!」
「工場長になる人ってだいたいこういう人!」
という暗黙の了解があるだけに、改めて大変な思いをして明文化することを怠ってしまうのです。結果として、時の考課者の認識が少しでも異なれば、評価基準も異なり、結果として上司のさじ加減で評価しているように見え、上司が変わったら仕事のやり方が変わってしまう文化が出来上がってしまうのです。
人事評価制度構築の手順
ここまでは、人事評価制度の難しさや良くない事例を紹介してきました。
ここからは、どのような手順で人事評価制度を構築していくと良いのかを紹介していきます。
ここでは、既に役職や社内階級などのベースがある程度整っている前提でお話を進めます。
個別の企業の事情もあるとは思いますが、大枠としてご参考になさってください。
評価制度構築手順①:昇進要件の作成
企業においては、課長、主任、リーダーなど、いわゆる役職があるかと思います。
人事評価制度を構築した後の運用も踏まえると、これらの役職に昇進するための要件を明文化するところから始めると効率が良いと考えています。
昇進に必要な項目としては主に4つです。
- 考え方:企業理念/社長の思いに賛同している
- 熱意:組織の発展のための自らの時間や労力を惜しまない
- 能力:個人目標の達成および組織に成果をもたらした実績がある
- 行動:部下の信頼を失う言動をしていない
このような項目に沿って、各役職への昇進の要件を明文化していくと良いでしょう。
昇進要件を最初に明文化する理由は、人事評価制度においては昇進した人が評価者となるためです。
納得できる評価者に評価してもらうことが人事評価制度の肝と言っても良く、「この人には評価されたくない」と思われてしまってはせっかく構築した制度も絵に描いた餅です。
ぜひ、昇進要件の明文化から始めてください。
評価制度構築手順②:昇格要件の作成
ここで指す昇格とは、各職場での階級をイメージしていただけると良いです。
例えば、ジュニア/シニア/リーダー/マネージャーなど、係長/課長/部長などとは別のクラスがあります。
人事評価においては、こうしたクラスと役職を別に切り分けて考え、クラスに応じた基本給+役職手当として賃金設計することが多くなっていますので、こうしたクラスが明確になっていないのであれば、まずはこのクラスと役職の関係を明確にしても良いでしょう。
さて、クラスが明確になったところで、このクラスの昇格の要件を明確にしていきます。
このクラスは、営業/製造/開発などの職場によって昇格の要件が異なってくるはずです。
従って、
- 共通要件
- 営業
- 製造
- 開発
- ・・・
の切り口から、それぞれのクラスへの昇格要件を明文化すると良いでしょう。
縦にクラス、横に職場を配置したマトリックスを作成することで一覧表として作成することができますので、実施してみてください。
評価制度構築手順③:賞与の設計
ここまで紹介した昇進/昇格の要件については、ある意味ではこれまでの実績や行動を踏まえた“過去”を評価して実施していく内容になっています。
同様に、賞与についても“過去の実績”を評価して考課していくのが良いと考えています。
年に2回の支給を計画しているのであれば、半年間のどんな観点で実績を評価するのかを明文化するのです。
“成果報酬型”という制度は良く耳にしますが、この“成果報酬型”は給与には反映せず、賞与に限定した方が良いと考えています。
給与は逆に“未来への期待”を込めて投資のつもりで設計すると良いでしょう。
ちなみに、賞与は支給する“パイ”が先に決まってそれを従業員で配分していくものですので、必然的に相対評価となってきます。
クラスによるベースの係数に成果報酬部分の係数を加えるものが最もメジャーな制度となりますが、考課時には全体の帳尻を合わせていく作業が必要になります。
その際、評価軸である観点を明確にしておくこと、そして半年間の実績のみに焦点を当てることを明確にすることで、複数人で評価する際の軸をブレさせないようにします。
評価制度構築手順④:給与の人事評価シートの作成
先ほども少し触れましたが、給与に関しては過去の実績を踏まえた上で、未来の期待も乗せるようにすると良いでしょう。
未来への期待を乗せることで、本人とのコミュニケーションのきっかけにもなります。
ここで大切なことは、精緻に作りすぎないことです。
精緻にすることで機械的に評価したいと考える企業もありますが、これはむしろ諸刃の剣になりかねません。
人が人を評価する難しさでもありますが、評価項目は明確にしつつ、人が評価する余地を残しながら設計することが望ましいでしょう。
もう1点大切なことがあります。
それは、評価者を適切に選定することです。
昇進要件の明文化のところでも触れましたが、評価される側としては、納得できる人に評価してもらわなければモチベーションを大きく低下させてしまいます。
そこで、評価者の診断シートを作成して、社長や幹部が常にチェックできる体制を作っておくことも大切です。
場合によっては、評価者としての資質を満たさない場合などはさらに上役が評価を代行することや、役職からの降格人事を行う必要もあると考えています。
評価者の診断シートには、以下のような項目を参考にしてください。
- 部下の悪口を言ってしまうことがある
- 自分の間違いを認めず部下に責任を追及してしまう
- 部下との約束を忘れてしまう
- 部下の秘密を別の場所で話してしまう
- 社内のルールを守らない
- 部下の話を最後まで聞かない
etc..
※多くても20項目程度
人事評価制度を正しく運用するための仕組み
人事評価制度を構築したら、その制度をうまく運用していかなくてはなりません。
そのペースメーカー的役割を果たすのが、フィードバック面談です。
フィードバック面談によって、評価者と従業員のコミュニケーションを図ります。
評価者は、どのような評価をしたのかを伝えるとともに、組織としての期待を伝えて反省と今後の頑張り方を示します。
従業員は、頑張り方が間違っていないか、どんな期待をされているのかを確認し、今後の頑張り方の方向性を見出します。
多くの企業は、昇格は年1回、賞与は年2回になっていますが、その場合は、人事考課のタイミングとしては年3回あることになります。
理想としてはその都度面談を実施し、評定を従業員に伝えるべきでしょう。
その昇格や賞与のタイミングが年間スケジュールの中での人事評価制度を運用するペースとなります。
年3回と聞くと多いかもしれませんが、組織が向かう方向性の認識合わせをすることと、本人の頑張る方向性の修正をしなければならないことを踏まえると、その回数は決して多くありません。
特に中小企業の場合、従業員同士の距離が近いこともあり、コミュニケーションが取れていると思い違いをしてしまいがちです。
普段のコミュニケーションも大切ですが、オフィシャルにきちんと話す場もきちんと区別して設けると良いでしょう。
尚、フィードバック面談の場で評定を知らせることになりますが、必ずしも紙で渡すなどはしなくても良いです。
評定をしたシートを見せてその評価シートをベースに会話をするだけで良く、渡す必要はないでしょう。
フィードバック面談と似たようなものですが、1on1と言われている1対1の面談を比較的頻度高く実施するというものがあります。
人事業界ではコミュニケーションを密にするために1ヶ月に1回以上の1on1の実施を推奨するところもあるようですが、当社は必ずしも必要はないと考えています。
コミュニケーションを密にする意味では1on1は有効な施策に思えますが、1on1にはリスクも潜んでいます。
評価者とはいえ、上司も人間で、従業員ももちろん人間です。
お互いに苦手意識がある場合は、面談の回数を増やすことは得策とは言えず、かえってモチベーションを下げてしまう原因にもなりかねません。
また、面談の回数を増やすことでマンネリ化を招き、踏み込んだ本質的な話が逆にしにくくなってしまうこともあり得ます。
さらに、そもそも面談は生産業務を止めて行うことであり、その面談の数をいたずらに増やすことは組織全体の生産性を下げてしまいかねません。
1on1の導入に真っ向から反対するわけではありませんが、導入する場合には慎重に判断しる必要があるでしょう。
360度評価は有効か
昨今では、人事評価の方法も多様化してきていますが、その中で360度評価と呼ばれるものがあります。
360度評価とは、人事評価を行う際に、あらゆる方面(全方位360度)からの評価をしようというもので、上司からだけの評価ではなく、一緒に働く先輩後輩含む従業員や他部署、延いては顧客などからも評価してもらう方法です。
たしかに、上司の前だけ良い姿に見える人もいるかもしれませんし、上司からは良く映っていなかったとしても後輩の面倒見が良かったりするかもしれませんし、他部署から見たときに頼れる存在かどうかも重要な要素でしょうし、社内ではきちんとやっているようでも顧客に対する態度が良くない場合もあるかもしれません。
そうしたあらゆる関係者に評価をしてもらうことは、人事評価の方法としては正しい方法とも思えます。
ただし、そんな360度評価は上記のメリットの半面、デメリットもあることを踏まえておきましょう。
例えば、あらゆる利害関係者からの評価をするとなると、評価者が増えるために人事考課のプロセスに多くの時間を要してしまいます。
また、それぞれの評価者が評価者の要件を満たしていることを保証しにくくなり、それぞれの主観に偏った評価結果が集まってしまう懸念もあります。
さらに、部下から評価されることを意識してしまうと、上司や先輩からの部下への指導が甘くなってしまうかもしれません。
こうしたデメリットを踏まえつつ適切に360度評価を実践するためには、かなり完成度の高い仕組みを構築する必要があります。
当社としては、よほど成熟した人事評価システムを運用してきている企業でなければ360度評価の導入はおすすめしません。
おわりに
さて、これをお読みの企業様においては、人事制度はうまく運用できているでしょうか?
労働人口の減少によって、人材の確保がますます困難になる時代です。
採用した人材が定着して確実に企業として成長していくためにも、以下の3つの要素を兼ね備えた強くしなやかな人事制度を構築し、従業員の士気の向上やモラール向上を図ることで、会社組織そのものを活性化させ、成長の活力にしていっていただきたいものです。
- 評価表
- 業務定義書
- キャリアパス
経営ビジョンの実現、そのための経営計画、そのための人材計画。構築した人事評価制度が絵に描いた餅にならないフィードバック面談をペースメーカーとする運用の仕組み。ぜひ、考えてみてください。
「社内の人事評価制度を見直してみたい!」
「自社の制度を客観的に評価してもらいたい!」
という方は下記のお問い合わせフォームから遠慮なくご連絡ください。
当社が人事評価制度の構築を支援する場合、試運用も含めて約2年間の期間と考えております。
会社の歴史も従業員も業務プロセスも異なりますので、他社の事例をそのまま当てはめても間違いなくうまくいきません。
パッケージのようにフォーマットがあるものでもなく、お客様のこれまでの仕組みや考え方を踏まえて、現時点で最適と思われる仕組みを一緒に考えて構築し、試しに運用し、改善する流れとなります。
この点をご理解いただいた上でご相談いただければ幸甚です。
お客様の声のご紹介
お客様へのインタビュー動画をご紹介しています。お気軽にご相談いただけますと幸いです!