製造業コンサルタントが教える業務改革の課題形成力

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製造業コンサルタントが教える業務改革の課題形成力

課題解決

この記事では、製造業出身のコンサルタントが全ての取り組みのスタートとなる課題形成について、その重要性や課題形成力育成のポイントを紹介していきます。

昨今では、日本産業全体の生産性を向上するために、DXやリスキリングの言葉の発信が良く見られますが、DXにしても、業務改革にしても、実際に企業が変わっていくためには何かしらの解決すべき“課題”があります。

その課題を正しく形成する力(課題形成力)が乏しい場合、課題を正しく設定することができなければ、業務改善や業務改革などの取り組みも徒労に終わるでしょう。

この記事の内容を参考にしていただき、課題形成力が不足していると感じた方は、ぜひ当社にご連絡いただき、一緒にプロジェクトを進めるパートナーとしてご指名ください。

製造業出身のコンサルタントが考える課題形成の重要性

「最初の課題設定が間違っている」

「正しいプロセスで課題形成を行っていない」

DXや業務改革のプロジェクトにおいて、こうしたことが原因でムダな工数を割いてしまっている組織も残念ながらあることは事実です。

取り分け残念な事例は、製造業の事業部門の中にいた経験がないコンサルタントに重要な課題形成の支援を任せると、財務中心になりがちで現場に伝わらなかったり、現場で具体的に何をして良いのか分からなかったりすることです。

システム開発に着手したものの、開発の最中に要件がどんどん変わり開発を頓挫した。

業務改革を推進するための部署を作ったものの、本来の課題が何なのかを見失い、組織の役割が分からなくなってしまった。

など、重厚長大な資料は手元にあるものの、具体的な現場の着実な行動に落とし込めなかった事例は枚挙に暇がありません。

そうした事例を目の当たりにするたびに、製造業の課題形成には、製造業出身のコンサルタントに支援を依頼するのが最も良いと確信を得ています。

言い換えれば、正しく課題が設定できたら、それはもう問題の8割が解決していると言っても過言ではありません。

何に取り組むか、どのように取り組むかが分かれば、あとは実際に行動するだけです。

課題形成を正しく行うことができれば、DXも業務改革もシステム開発もサービス開発もスムーズに進めていくことができるでしょう。

少し違った視点から眺めてみますが、“問題解決”という言葉が一般的にはあります。

その問題解決には順序があります。

  1. 問題認識
  2. 現状分析・課題明確化(課題形成)
  3. 目標設定
  4. 計画策定
  5. 実行
  6. 検証・ナレッジ化

の大きく6つの段階です。

第一段階である問題認識については、問題を列挙して共有することで比較的容易にできるかと思います。

敢えてポイントを言うなら、「紙に書き出すこと」「文字にして視覚的に共有すること」が大切ですが、会議の場などでホワイトボードなどを使いながら行うことは比較的容易です。

難しいのは2番目の課題形成です。

問題が明確になったあと「じゃあどうする?」となったときに、そのスタートである課題を正しく設定できるかどうかがその後の活動を大きく左右する要素となります。

ありがちな失敗が、解決策ありきで課題を設定しまうこと。

「この不良の発生は成形条件をこう変えればマシになるから、課題は成形条件の管理だ」

「この不良の流出は検査漏れを失くすことで防げるから、検査のダブルチェックをすることだ」

製造業の現場ではよく聞かれる事例ですが、これでは問題の根源を失くすための課題設定になっていません。

「成形条件が振れても不良にならないための設計もしくは環境変更だ」

「工程内検査で確実に発見できる検査治具を開発することだ」

例えばではありますが、このような考え方の方が根本的な業務改革に繋がります。

こういった感覚は、実際に製造業の不良の対策、延いては業務改革を行ったことがある製造業出身のコンサルタントでないと見分けることができません。

業務改革における課題形成の難しさ

DXや業務改革での課題形成がなぜ難しいか、それはズバリ、

 やってこなかったから

です。

思考力は、①インプットに必要な情報処理能力、②アウトプットに必要な課題形成力の2つに大きく分けられます。

学校の勉強はもちろんのこと、実は社会の大半の仕事は①の情報処理能力を主とした思考力となっています。

従って、アウトプットする能力である課題形成力は使う場面が比較的少なく、意識しない限りその力が伸びることはありません。

ましてや、業務改革に日常的に関わる機会も多くありません。

これまで企業の中にいて業務に従事してきた従業員に対して、業務改革の推進に関する重要な役職に配置し、急に「課題形成力を身につけよ」といったところで、一朝一夕で身につくものでもありません。

筆者自身が製造業出身なので分かりますが、製造業の問題解決の思考は、ある意味では学校と社会の一番の違いなのではないかと思えます。

一般的にコンサルタントと呼ばれる職種の人は、この課題形成力を日常の業務の中で鍛えてきています。

加えて、製造業出身のコンサルタントであれば、形成された課題の質はもちろん、大元でもある認識している問題の質にも言及することができます。

製造業コンサルタントが教える課題形成力育成のポイント

上記のように、製造業出身のコンサルタントであればある程度身についている課題形成力でも、従業員に教育し課題形成力を育成していくためには、意識的な教育が必要になります。そのポイントを、ここでは2点挙げます。

教育ポイント①:常に考えさせる

業務中に適切な問いかけを行うことで、担当者に常に考えさせるようにしましょう。

 「〇〇さんの意見は?」

 「この件についてどう思う?」

と都度問いかけることで、考えを発信する機会を与えます。

考えているだけではなく言葉として発することで、どこまで理解できていて、何がわからないのか、を伝える力が付きます。

この継続こそが課題形成力を持つ人材育成のポイントです。その際、

 「結論出てなくてもいいよ」

ということも重要です。

なぜなら、ただ聞いただけではまとまった結論を求められているという勘違いを生み、考えている途中の思考に関して言葉を発することを止めてしまうからです。

あくまで、考えを発信する機会を提供する、ということを心がけましょう。

製造業の現場は、不良の発生や改善など、問題解決と日々向き合っていますので、こうした機会を作ることは難しくないでしょう。

欲を言えば、大局的思考、本質的思考、情報統合、仮説組立等の力までを見て判断できれば良いのですが、最初はそこまで考えなくても良いと思います。

教育ポイント②:書(描)かせる

考え方をまとめる際に役に立つのは、書く、とりわけ「描く」ことは非常に役に立ちます。

議事録を書かせることも良いでしょう。

一番は、図で描かせることです。

 「今日の話を総合するとどんなイメージ?」

という問いかけで図を描かせてみると、どの程度理解しているのかが分かりますし、何より本人がきちんと理解しているかどうかの自覚を促すことができます。

本質的な理解をしていなければ図で描くことはできないからです。

議論のポイントや方針、本人の考えが表れているかを見るようにしましょう。

製造業の現場では、なかなかじっくり腰を据えて紙に書く(描く)作業をすることが難しくなります。

口頭ベースになってしまったり、ベテランの経験と勘が先行してしまうときもあるでしょう。

製造業出身のコンサルタントを自称する筆者だからこそ敢えて言います。

自分の再認識のため、自分の考えていることを伝えるために、紙に書き(描き)ましょう。

課題形成力の育成をする人材は選抜する

育成する人材は選抜

ここまで課題形成力育成のお話をしてきましたが、お察しの方もいるかと思いますが、残念ながら課題形成力の育成は全員ができることではありません。

教育する側の負担も考え、期待できる人材を選抜して注力することも重要になってきます。

選抜ポイント①:これをやらせて見極める

  • プレゼンテーション使用の作成
  • レポート(報告書)の作成
  • スローガン作成、活動目標の設定
  • イベントの企画・実施
  • 問題点の発見とその原因究明、解決策の提案

上記の活動をやらせれば、おおよそ育成するべき人材は選抜できます。

  • 全体のシナリオは通っているか
  • 因果関係は明確か
  • 事実と意見を区別できているか
  • etc…

共通しているのは、紙などに書いて(描いて)表現する点で、そもそもキチンと書き(描き)落とせる力は非常に重要になってきます。

この点については、感覚的にもご理解いただけるかと思います。

選抜ポイント②:見極めポイントはこれ!

  • 見た目の分かりやすさ
  • 論理性(ロジカルな説明)
  • 言葉の選び方、使い方

見極める側の判断基準も当然明確にしておくべきですが、筆者が考える見極めの基準は上記の3点です。

細かい内容の良し悪しは一旦置いておいて、考え方や伝え方のフレームについて見てあげてください。

業務改革を進める上では、他の部署も含めて多くの関係者に向けた説明も必要になります。

そうした素養を見る意味でも、上記の3点はある程度の判断基準にはなると思います。

そうは言っても難しい人材育成

2022年の中小企業白書に掲載された厚生労働省の調査結果によれば、人材育成・能力開発に当たっての課題として、

  • 育成できる人材がいない
  • 育成に時間が割けない

が上位の2大課題としてあります。

これを解決するための一つの手段として、コンサルタントの活用をお勧めしています。

コンサルタントは、お客さまの固有の技術に関するプロフェッショナルではありませんが、問題を分析し、課題形成することに関してはプロフェッショナルです。コンサルタントを活用するとはいえ、お願いして完全にお任せにしてしまうのではなく、育成したい人材とともに活動を実施していくことで、問題分析のアプローチや課題形成の軌跡をOJT形式で体験させることが可能です。

さらに、そのコンサルタントが製造業出身であれば、問題分析の質や形成された課題の質をチェックしてもらうこともできます。

その結果、課題形成力の育成と問題解決を同時に達成することができ、延いてはその問題を解決することで企業にも良い影響をもたらします。

もちろん自社でも人材の育成をすることは可能ですが、そもそもの課題形成能力を教える人材の育成も考えなければなりませんし、時間がかかってしまいます。

コンサルタントの活用は、単純にノウハウを得ることの他に、ノウハウを得る時間を大幅に短縮する効果もあると言えます。

おわりに

DXでも業務改革でも、課題形成は問題解決の入り口で、その後の活動の成果に大きく影響を与える重要な部分です。

育成に掛ける時間にしても、コンサルタントにお願いするにしても、それはいずれも投資ですので慎重な判断が必要でしょう。

一方で、何も行動をしなければ何も始まらないことも事実ですし、これまでと同じやり方の延長で問題解決力および課題形成力を持つ人材の育成ができていけるとも思えません。

何より、経営者にとって最も重要である経営課題の解決にいつまで経っても繋がらないのは大きな機会損失となります。

弊社では、経営課題の内容の整理、問題解決力や課題形成力の育成を兼ねながらの経営課題解決の伴走支援等、無料相談はいつでも承っております。

製造業出身のコンサルタントだからこそできる“経営と現場をつなぐ”伴走支援をお約束します。

ぜひご連絡ください。

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著者

大原 健佑

出身:長野県長野市 最終学歴:東北大学 工学部 金属工学科 卒
保有資格:中小企業診断士・QMS審査員補/2015 (JRCA登録番号:A22594)(ISO9001審査員資格) ・QC(品質管理)検定1級 ・フォークリフト ・床上操作式クレーン ・玉掛け

ものづくり企業の生産性向上と人財育成を促進する専門家。
「現場が自ら動く!」「現場に任せる!」「業務改善を圧倒的に加速させる!」「技術開発を確実に進める!」をベースに、各ものづくり企業の業務改善プロジェクトに参画し、プロデュースを行っている。