この記事では、生産管理のお困りの製造業の事業者の方向けに、生産管理をしっかりと行っていくためのコツを紹介します。自社の生産管理が徹底されていない、生産管理を徹底して業務の効率を上げたい、とお考えの方はぜひご参考になさってください。
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目次
生産管理の問題は多岐にわたる
「ウチは生産管理のレベルが低いんです」
「全体的な効率が悪く生産管理システムを入れ替えたい」
「確実に利益を出していくために生産管理を徹底したい」
こうしたお困りごとのご相談を多くいただきます。
実際に、そのような現場におじゃまして詳細はお話をお伺いすると、実は“生産管理”と表現されている問題は、たしかに生産管理全体としての問題ではあるものの、もう少し解像度を高めると別のピンポイントの問題であったりします。
たとえば、「納期遅れが頻発してしまっていて生産管理を徹底したい」場合には、“生産管理”と解釈の幅が広い言葉で表現するより“納期管理”と表現する方が適切でしょう。
また「1件1件の利益が確実に取れているかを把握するために生産管理を徹底したい」場合には、“原価管理”や“予実管理”と言った方が適切です。
さらに、「会計管理を確実にして見えるようにしたい」というご相談に対して詳しくお話を伺うと、“在庫をしっかりと把握したい”ことが一番の課題であったりすることもあります。
従って、感じている問題を解決するためには、“生産管理の問題”という大きなまとまりで表現することなく、もう一歩二歩深く分析し、問題の根源を明確にする必要があるのです。
生産管理の問題の根底には工程管理の問題がある
弊社ではそんな多岐にわたる“生産管理の問題”に携わってきていますが、ある共通点があることに気が付きました。
生産管理を徹底しなければならない企業においては、もれなく“工程管理”を徹底する必要があるのです。
多くの企業が工程管理に問題を抱えているにもかかわらず、なぜその工程管理の問題にたどり着かないのか。
それは、“工程管理”の定義のあいまいさにあると考えています。
さて、弊社が考える“工程管理”を解説する前に、“工程管理”の意味がいかにあいまいなのかを見ていきましょう。
工程管理の一般的な定義
インターネットで“工程管理”と検索すると以下のような説明がヒットします。
工程管理とは、製造工程に関わる「製品づくりの進行を管理すること」を指します。
A社ホームページより
工程管理とは、製品の製造工程を具体的な計画に落とし込んで可視化し、そのプロセスを管理・統制するマネジメント手法を指します。工程管理の主な業務として挙げられるのが、「作業工程の策定」「生産計画と業務負荷の管理」「工程の進捗調整」の3つです。具体的には、製造における作業内容や手順、配置する人材、生産能力や負荷工数、使用する生産設備などを明確化し、策定した生産計画に基づいて製造工程の進捗状況を管理・統制します。工程管理はものづくりに関わる業務だけでなく、システム開発や営業活動を推進するうえでも活用されるマネジメント手法です。
B社ホームページより
工程管理とは、生産計画を実行するために生産工程の進捗や労力、設備、原材料などを管理することです。「QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)」の最適化を行い、プロジェクトの成功を目指します。工程管理の目的として、生産性向上、業務効率化、コスト削減、品質の担保などが挙げられます。
C社ホームページより
A社、B社、C社は、それぞれ、製造業向けの生産管理システムを販売していたり、コンサルティングを行っていたり、製造業の生産業務効率化を支援している大手企業です。
これら企業の解説文は、一見するとそれらしいことが書いてあるように思われますが、改めてこの工程管理に関する解説文を見てみると、
・抽象的で具体的には何を指しているのかが分からない
・概念は分かるものの、自社においては何をすることが工程管理なのかが分からない
ことに気が付きます。
つまり、読み手の方が自社において生産管理レベルを上げるために、工程管理について具体的に何をどうすることで、具体的な管理が結果的にどんな状態につながることなのかがクリアになっていないのです。
このように、いろいろなところで言われている“工程管理”の意味があいまいなために、その重要性に気が付けない状況となっています。
生産管理の基盤となる工程管理とは何か
それでは、弊社が考える“工程管理”について、以下の名言に基づいて3つの観点から解説します。
定義できないものは管理できない
管理できないものは測定できない
測定できないものは改善できない
by エドワーズ・デミング(米国:統計学者・コンサルタント)
①工程の定義
まずは、社内における“工程”がしっかりと定義されていることです。
ここで指す“工程”とは、たとえば、仕入れ、製造、保管、出荷、などの大きな括りである場合もあります。基幹システムやERPなどで管理する際には、作業実績管理も製造原価なのか販管費なのかが区別できれば良いのでこのくらいの大きな括りの方が良いかもしれません。
一方で、たとえば金属加工の現場であれば、旋盤加工、フライス加工、穴あけ、研磨、検査など、食品製造の現場であれば、仕込み、寝かせ、製造、冷凍、などのやや細かい工程も同時に定義できている必要があります。
一般的な生産管理システムの導入や活用を考えているのであれば、品種ごとにこのレベルの工程の定義は最低限進めておく必要があるでしょう。
②工程の管理
さて、工程の定義ができたら管理をするわけですが、“工程の管理をする”ということがどういうことなのかを考えてみます。
それは、“工程と工程の区切りが明確であり、実際に製造しているものや作業している段階が明確に区別できる状態”を指すと考えています。
「今製造しているこのモノはどの段階にあるモノなのか」
「今作業しているのは、製造全体の工程の中でどの位置の作業なのか」
モノ一つ一つ/作業一つ一つが明確に区別できることがポイントです。
そして、それが実際に製造している担当者だけでなく、管理者も把握できる状態にあることも大きなポイントです。
「担当者に聞けば分かる」というケースも多くありますが、言い換えればそれは「担当者に聞かなければ分からない」ということであり、管理されている状態とは言えません。
その点をしっかりと理解しておきましょう。
③工程の測定
次に、工程が測定できる状態とは、どんな状態なのかを考えてみると、以下の2点が要件として挙げられます。
・各工程にかかる標準時間(標準工数)が決められている
・各工程に要した実績時間(実績工数)が分かる
いわゆる“予実管理”が定義された工程ごとにしっかりとできる状態です。
工程の定義とも大きく関わりますが、工程の“粒が大きすぎる”と、把握できたところで改善につながりません。従って、基幹システムやERPなどで管理する“粒の大きさ”と、実際に現場で改善につなげるために必要な“粒の大きさ”は異なります。
この違いを理解した上で、現場で改善につながるレベルの“粒の大きさ”に各工程を定義する必要があり、その各工程において標準時間(標準工数)が設定され、実績時間(実績工数)がしっかりと測定できる必要があるのです。
この状態になって初めて改善につなげることができ、弊社ではこの状態を指して“工程管理”と呼んでいます。
ちなみに、この工程管理ができると、モノがどの状態でどこにいくつあるのかも測定できるため、在庫管理も行うことができます。
モノがどの状態でどこにいくつあるのかが分かると、各仕掛在庫の量によってボトルネックの工程を特定することもできます。
また、各工程で扱っているモノや作業時間の実績も明確に測定できるため、原価管理にも役立ちます。
さらに、「品質は工程で作り込む」ことを徹底できたり、万が一不良が発生するなどした場合にも工程のトレーサビリティが取れたりするなど、品質管理レベルの向上にも役立ちます。
このように、工程管理ができていることは生産管理のレベル向上にそのまま直結してくるのです。
生産管理レベル向上のための工程管理の進め方
工程管理が生産管理における基盤になっていることをご理解いただいた上で、実際に工程管理をしていくための進め方を紹介しますが、基本的には上述した考え方のプロセスと同じです。
①工程を定義する(各工程におけるモノの状態を定義する)
②各工程における標準時間を設定する
③各工程におけるモノの数量と作業の実績を測定できるようにする
この順番で進めると良いでしょう。
実際には、各工程でのインプット/アウトプットの要件を決めたり、必要な情報を決めたりするなど詳細な定義は必要になりますが、大枠として上記の考え方で進めることで“生産プロセス”の軸が通るため、その他の肉付けもやりやすくなります。
ちなみに、この工程管理の考え方は、生産だけでなく間接作業などの事務作業にも応用することができます。
それによって定義されるものがいわゆる“業務プロセス”です。
業務プロセスの改善においても、各作業の定義と流れが重要になりますので、ぜひ参考にしてみてください。
おわりに
生産管理の根底には工程管理がある。
ご理解いただけましたでしょうか。
在庫管理、原価管理、納期管理、などなどの生産管理全体のことでお悩みであれば、まずは工程管理の徹底から取り組んでみると良いです。
そうは言っても、各社での工程管理方法や生産プロセスなどは千差万別です。
もし、自社における工程管理の考え方など、ご不明な点がございましたらお問い合わせください。
各社にマッチした工程管理方法のご提案をいたしますので、ぜひともおまかせください!
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