中小企業のための人材確保・定着ガイド【製造業の未来を支える!】

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中小企業のための人材確保・定着ガイド【製造業の未来を支える!】

製造業の採用

この記事では、製造業の中小企業がどのように人材確保をしていくべきか、その方向性と具体策について紹介します。

製造業の皆さん、会社の未来を考えるとき、一番大切なのは何でしょうか?

多くの企業が、優秀な人材を確保して大切に育てたいと考えていることと思いますが、現実はなかなか厳しいものがあります。特に中小企業では、人材の確保や育成が大きな課題となっています。技術の進化や市場の変化に対応していくためには優秀な人材が必要不可欠ですが、なかなか思うように人材を確保できないのが実情です。

今回の記事では「人が辞めない会社づくり」に焦点を当てながら、人材の確保を、人材の「定着」と「採用」に区別して考え、優秀な人材を採用するだけでなく、彼らが長く働き続けるための環境をどう作るか、その秘訣に迫ります。

「人が辞めない会社づくり」は単に従業員が満足する職場を作るということだけではありません。会社の文化、働き方、キャリア開発支援、さらには日々のコミュニケーションまで、多角的な視点からアプローチする必要があります。この記事を通して、製造業における人材確保の現状を理解し、人材が長く働く会社を作るためのヒントを得ることができれば幸いです。

製造業における人材確保の現状

製造業、特に中小企業が直面している最大の課題の一つが、優秀な人材を確保することです。では、なぜ人材確保がこれほどまでに難しいのでしょうか?

一つの大きな理由は、労働市場の変化です。技術の進歩や市場のニーズは日々変わりますが、それに伴う技術者や専門職の需要は高まる一方で、供給は追いついていません。特に中小企業では、資源の限られた環境下で高いスキルを持つ人材を確保することが一層困難になっています。

また、製造業への若者の関心の低下も無視できません。多くの若者は、製造業を「きつい」「汚い」「危険」といういわゆる【3K】のイメージで捉え、IT業界やコンサルティング業界など他の業界を志向する傾向にあります。これにより、製造業の“モノを創り出す”魅力を感じてもらうことがさらに困難になっています。

ものづくり業界に関わる弊社としても、この傾向は由々しき事態であると考えており、各企業様のブランディングや魅力のPRには引き続き貢献していきたいと想いを強くしています。

実際のデータを見てみると、製造業における人材不足の現状が明確になります。例えば、ある調査によると、中小製造業の約70%が「人手不足を感じている」と回答しています。さらに、その内の約半数が「適切な人材が見つからない」という悩みを抱えていることがわかります。これらの数字から、人材確保の難しさが如実に伝わってきます。

こうした状況に対して、行政機関でもさまざまな施策を講じています。

多様な形態での人材確保を支援する「地域中小企業人材確保支援等事業」、経営者向けの研修を提供する「中小企業基盤整備機構の人材育成事業」、景気変動に伴う雇用維持のための「労働者の雇用維持対策」などが含まれます。

また、「魅力ある職場づくりに向けた雇用管理の改善の支援」を通じて労働環境の改善を促し、地域の雇用創出と安定を目的とした「地域雇用開発助成金」、東京一極集中の是正と地域企業の人材確保を目指す「中途採用等支援助成金」、新型コロナウイルスの影響に対応する「地域活性化雇用創造プロジェクト」などが展開されています。

さらに、「成長分野等への人材移動の促進」による再就職支援や、「人材確保対策推進事業」によるマッチング支援が行われ、中小企業や地域企業の様々な人材確保と雇用維持のニーズに応えています。

このような状況において、中小企業および製造業全体で、より効果的な人材確保の戦略を考え、実行に移すことが急務となっています。次のセクションでは、成功している企業がどのようにして人材を確保し、定着させているのか、その具体的な事例を見ていきましょう。

製造業人材確保の成功事例~人材を確保し定着させる製造業企業の戦略~

成功事例

製造業における人材確保と定着の難題を克服し、成功を収めている企業もあります。ここでは、そうした企業の事例と彼らが採用している具体的な戦略に焦点を当てて紹介します。

事例1: テクノロジー活用による魅力的な職場環境の創造

ある中小製造業企業は、最新のテクノロジーを活用して作業環境を改善しました。生産ラインにロボットやAIを導入することで、従業員の負担を軽減し、より専門的でスキルの高い業務に集中できるようにしました。これにより、従業員の満足度が向上し、仕事へのモチベーションアップにつながっています。実際には、従業員の負担が減ること以上に、「中小企業でもこうした新しい取り組みができる」「生産性が上がったら結果的に給与も上がった」といった前向きな気持ちや報酬制度が直接的な成功要因となっています。

事例2: 積極的な社内研修とキャリアパスの提供

従業員のスキル向上とキャリア開発に力を入れている製造業企業の事例もあります。定期的な研修プログラムの提供や、昇進・昇格の機会を明確にすることで、従業員が長期的にキャリアを築ける環境を整えました。業務定義書として各役職の役割を明確に言語化して示すことは、評価の透明性も高めます。結果として、従業員の定着率が向上し、企業全体の生産性も高まっています。若手人材が気になることとして「この会社にいたら自分はどんな人間になれるんだろう」という疑問や不安、言い換えれば楽しみがあります。そうした期待に応えるためのキャリアパス設計や教育制度は、若手人材定着の成功要因になります。

事例3: 従業員の声を重視した職場改善

従業員の意見を積極的に取り入れた職場改善の事例もあります。定期的なアンケートやミーティングを通じて、従業員の意見や提案を収集し、それを職場環境や業務プロセスの改善に反映させています。この取り組みにより、従業員は自分たちの意見が重視されていると感じ、職場への愛着を深めています。逆の失敗例として「トイレが和式だから」という理由で入社しなかった人材もいます。製造業では、経費をかけるべき優先順位として設備投資の優先順位が高く、直接的な利益を生まない建物などへの投資の優先順位が下がりがちです。しかしながら、従業員定着のためには、職場環境の改善は無視できない優先順位が高い投資としてとらえるべきでしょう

これらの事例から分かる通り、人材を確保し、定着させるためには、従業員の満足度を高める職場環境の創造、スキル向上とキャリア開発の機会の提供、そして従業員の声を聞くことが重要です。これらの戦略は、従業員が会社に長く留まりたいと思う魅力的な職場を作るためのカギとなります。

人材採用のポイント~効果的な製造業人材採用の方法~

最適な採用

製造業における人材採用は、企業の未来を大きく左右します。ここでは、効果的な人材採用方法と、採用プロセスの具体的な改善点、候補者にアピールする方法について解説します。

1. 詳細な情報を含む求人票の作成

成功する人材採用の第一歩は、可能な限り詳細な情報を含む求人票の作成です。仕事の内容、勤務地、勤務時間、給与、福利厚生、キャリアアップの機会など、候補者が知りたい情報を包み隠さず記載することが重要です。これにより、求職者は自分に合っているかどうかを事前に判断しやすくなります。例えば、どんな設備を扱えるようになるのか、30歳の担当者はどんなポジションなのか、係長の年齢は何歳なのか、入社後の教育システムはどのようになっているのか、OJTやジョブローテーションはあるのか、人事異動などの配置転換はあるのか、などを具体的に記載しておきましょう。求職者にとってこうした情報は長期的に働けるかどうかの判断基準になります。

2. 働き方を具体的にイメージさせる

求人票には、単に職務内容を挙げるだけでなく、実際の働き方を具体的にイメージさせる情報を盛り込むことが効果的です。たとえば、実際のプロジェクト例やチームの雰囲気、日常の業務の流れなどを紹介することで、候補者は自分がその職場に溶け込んでいる様子を想像しやすくなります。ある会社では「工場内wi-fi使用自由」「休憩室コーヒー飲み放題」「会社へのお歳暮は従業員で分けて持ち帰り」「作業着貸与&クリーニング代は全額会社負担で実施」「ロッカー貸与」というような細かいことも記載しています。こうした細かい譲歩から、職場の雰囲気も想像できますので、求職者にとっては応募に至るまでの安心材料にもなります。

3. 採用プロセスの改善

採用プロセス自体も見直すことが必要です。応募から面接、内定までのステップをスムーズにし、応募者とのコミュニケーションを密にすることで、候補者の関心を持続させます。特に、同じ職場で一緒に働く人は面接などには同席してもらうのが良いです。一方で、候補者からすると、「面接は誰とやるのかな」「面接は何回あるのかな」「応募してから内定をいただけるまでどのくらいの期間がかかるのかな」といったことはとても気になるところです。しかしながら、求人票などにはそのことが明確に書かれていない企業がほとんどで、不安のまま応募をすることになってしまいます。採用プロセスを見直したらそれを明示すると良いでしょう。

4. 企業の魅力をアピール

企業の魅力をアピールするためには、単に良い条件を提示するだけでなく、企業文化や働く意義、成長の機会なども強調する必要があります。候補者が求めるものが何であれ、それに応える姿勢を示すことで、より多くの優秀な人材を引き寄せることができます。反対に、候補者にとってデメリットになり得る情報も積極的に伝えましょう。採用段階での認識合わせが、離職率を下げるポイントにもなっていることを知っておいてください。例えば、季節による繫簡がある事業であれば「春夏は残業時間が30時間/月になることもあります」ということや、「裁量権のあるポジションである代わりに毎月の社長への報告義務とともに得意先への報告義務が生じます」など、候補者にとって負担になり得る要素があればしっかりと伝えてください。

これらのポイントを踏まえることで、製造業における人材採用はより効果的になり、求職者にとって魅力的な企業として映ります。企業の将来を見据えた人材採用戦略は、成功への重要な一歩となるでしょう。

人材定着のための戦略~製造業における長期雇用の環境作り~

退職率の改善

製造業において優秀な人材を長く留めるために、従業員が長く働き続けるための環境を整えることが重要となります。ここでは、製造業の人材定着に関する4つの観点を紹介します。

1. 組織文化の構築

従業員が長く働き続けるためには、強い組織文化が不可欠です。社員が共感し、誇りを持てるような企業理念を持ち、それを日々の業務に反映させることが大切です。また、オープンでコミュニケーションが活発な職場環境を作ることで、従業員同士の絆を深め、職場の離職率を下げる効果が期待できます。この情報だけでは「理想的すぎる。。」と思えるかもしれませんが、目指すべきはこの領域です。例えば、オープンなコミュニケーションでは社長の部屋をガラス張りにしたり、社長のスケジュールを従業員全員に公開したりする取り組みはすぐにでもできることです。また、全ての経営数字を全従業員に開示している企業もあります。何に取り組んでよいか分からなかったら、こうしたことから始めてみてはいかがでしょうか。

2. 福利厚生の充実

福利厚生の充実も人材定着には欠かせません。健康保険や退職金制度はもちろん、従業員が仕事以外の生活も豊かに送れるような支援を企業として実施します。例えば、保育所の提供や家族を含めたレクリエーション活動などを実施している企業もあります。以前に私が勤務していた会社では、年末には社員と社員の家族を全員招待し、1泊2日の慰安旅行を行っていました。幹事は経営陣で、従業員を労い、従業員を支えてくれている家族に感謝する機会を作っていました。こうした機会を作ることにより、従業員は仕事とプライベートのバランスを保ちやすくなります。

3. キャリア開発の支援

キャリア開発へのサポートは、従業員が自分の将来を企業内で見いだせるようにするために非常に重要です。定期的なキャリア相談やスキルアップのための研修提供、昇進機会の提供などを通じて、従業員の成長を支援し、企業へのロイヤルティを高めます。特に、優秀と言われる人は、自分をより高みへと導いてくれる環境を求めます。さらに、そうした優秀な人は行動力もあるので、自社で今以上の満足度が得られないと悟ると別の会社へと転職してしまうことも往々にしてあります。常に、従業員が成長し続けられる環境作りは企業の永遠のテーマです。

4. 基本的な5Sや改善の実施

製造業における職場環境の改善には、「5S」(整理、整頓、清掃、清潔、躾)の実施が、当たり前のように基本的ですが、実は最も効果的です。整理整頓された職場は作業効率を高めるだけでなく、従業員の安全と快適さを確保し、職場に対する満足度を高めます。また、小さな改善を積極的に行うことで、従業員が自身の働く環境をより良くするためのアクションに関与することができます。例えば、採用面接のときに工場見学に訪れた候補者が、油まみれになった床を見て働きたいと思うでしょうか。暗い職場、寒い職場、暑い職場で働きたいと思うでしょうか。こうした基本的なことを客観的視点でとらえながら活動をしていきましょう。

製造業において従業員が長く働き続けるための環境を整えるためには、これらの要素を組み合わせて取り組んでいく必要があります。従業員の満足度が高い職場は、自然と定着率も向上し、企業全体の生産性の向上にもつながるでしょう。

まとめ

製造業の採用事情まとめ

いかがでしたでしょうか。この記事を通じて、製造業における人材確保と定着のための重要ポイントを見てきました。成功事例の紹介から学んだ具体的な戦略、効果的な人材採用方法、そして従業員が長く働き続けるための環境作りに焦点を当てました。これらのポイントは、企業が直面する人材問題を解決するための指針となります。

各企業においては、これらのポイントを基に、自社の現状を見直し、必要に応じて改善策を講じることが重要です。特に、詳細な情報を含む求人票の作成、働き方を具体的にイメージさせる内容の提供、組織文化の構築、福利厚生の充実、キャリア開発の支援、そして職場の5Sや改善の実施は、人材確保と定着において特に重要な要素です。

人が辞めない会社づくりは、単に従業員を維持すること以上の意義を持ちます。それは、企業の持続可能な成長、イノベーションの推進、そして延いては業界全体の競争力強化に貢献します。今後も、製造業における人材問題への対応は、技術の進化、市場の変化、働き方の多様化に合わせて進化し続けるでしょう。

弊社では、従業員一人ひとりがその能力を最大限に発揮し、仕事に対して満足感を持ちながら、「現場の第一線がもっと輝く社会」の実現を目指しています。そのために、今回紹介したポイントの実行にお困りの企業がございましたら遠慮なくご連絡いただき、パートナー企業とともに一緒に積極的な取り組みと改善を続けていけたらと考えています。

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著者

大原 健佑

出身:長野県長野市 最終学歴:東北大学 工学部 金属工学科 卒
保有資格:中小企業診断士・QMS審査員補/2015 (JRCA登録番号:A22594)(ISO9001審査員資格) ・QC(品質管理)検定1級 ・フォークリフト ・床上操作式クレーン ・玉掛け

ものづくり企業の生産性向上と人財育成を促進する専門家。
「現場が自ら動く!」「現場に任せる!」「業務改善を圧倒的に加速させる!」「技術開発を確実に進める!」をベースに、各ものづくり企業の業務改善プロジェクトに参画し、プロデュースを行っている。