お客様にお困りごと等の最初のヒヤリング時に、
「IoTってどんなことができるかわからない」
「なんかすごそうなんだけど、どうやったらいいのかわからない」
という声を一番多く聞きます。
さて、今回はこの産業現場のIoTについて、特に製造IoTについて紹介していきます。
目次
What①:IoTって何?
近年、急速に「IoT」という言葉が産業界で目立ち始めました。ものづくりの世界でも、ものづくりワールドでの展示会をはじめとして、あらゆる場所でIoTの看板が掲げられており、製造業の働き方改革に製造IoTはもはや外すことの出来ないものとなっています。
そもそもIoTとは
IoTとは、Internet of Thingsの略称です。と言われてもわかりませんよね。
通称:モノのインターネットは言われており、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みで、それによるデジタル社会の実現のことも指し、経済産業省が推進するコネクテッドインダストリーズやソサエティー5.0との関連でも注目を集めているものです。と言われてもまだわかりにくいです。
IoTと調べるとこういった言葉で説明文が出てくるのですが、この説明だけではわからないことが普通です。何一つ具体的な事例が思いつかないですから。ましてや製造IoTとなれば尚更です。そこで、IoTに関する質問を通じて、製造IoTを少しブレイクダウンしてみましょう。
What②:IoTって何ができるの?
この質問はお客様から、ディスカッションの入り口として頻繁にいただく質問です。製造業の多くのお客様は謙遜して「自分たちはIoT化が遅れていて知識もなく、、、」と枕詞を置きますが、御心配には及びません。製造IoTについてわかっている人はそれほど多くない、と言うのが私の実感です。
さて、少し事例を見てみましょう。
製造IoTの最先端事例(テレビとかで見る遠い世界)
様々なメディアに出る、あるいは展示会に出展されるようなIoTは、はっきり言ってかなり宙に浮いている印象です。
「あれの情報もこれの情報も全部一つのシステムで一元的に可視化!」
「あらゆる情報を一つの画面でパッと見える化可能!」
という言葉が謳われています。ものづくりの世界の製造IoT事例では、
調達した材料のロットや納品日の情報、使用した材料の履歴、材料を加工した際の設備状態および加工条件、完成品の出荷先や納品日時まで、生産のすべての情報が一元管理可能
とか、こんな風に言われています。言われればなんとなくわかるし、たしかに原理的には十分可能で、基本的にはIoTと言ってもソフトウェアの組みあわせですから出来ないことは全くないですし、受注情報から生産計画と出荷情報くらいであれば何年も前からシステム化されているところも多いでしょう。
ただ、そういった製造IoT実現のために超えなければならない足元に転がっている現実的な問題は山ほどあります。
例えば、材料の調達と発注情報はサプライヤとのやり取りで独立したシステムになっていて、受注情報と出荷情報は得意先とのやり取りのため独立したシステムになっていて、どうやって一つにするの?
といったようなことから、
設備状態や加工条件って言っても、どうやってセンシングすればいいの?外付けのセンサーの情報は手入力しないといけないの?
というようなことまで、製造現場の実態を良く知る人にとってはいまいちピンとこないのが現状で、この煌びやかで華やかな宙に浮いたIoTの話だけ聞いても、
「あぁ、うちはまだまだだなぁ。」
「全然別世界だなぁ。」
と敬遠してしまっていることが多いことが現実です。
What③:IoTって何をしたらいいの?
この質問は、ディスカッションの最中にたどり着くものです。そう、IoTの説明だけ聞いても結局何していいのかわからないのです。私が考えるこの質問の答えはただ一つ。
できる小さなことから始めよう!
これだけです。シンプルな結論なのですが、製造IoTをこの「できる小さなこと」にブレイクダウンすることが難しいのです。なぜなら、上記でも述べた宙に浮いたような現実離れしたIoTしか情報がないので、そういった手段を使って足元の製造IoTは何ができるか考えても、問題ばかりでできることが何も出てこないのです。
いつも私が与えるヒントとしては、
IoTのハードルを思いっきり下げる!
ということをします。つまりIoTを拡大解釈し、ごく簡単なことでも製造IoTだと言ってしまえば良いのです。
例えば、工作機械の加工条件と場内の温湿度の情報を収集して一つのExcelにまとめた
これも、工作機械というモノの情報と場内の環境というモノの情報がつながったため、製造IoTです。どうでしょう。このくらいならできそうになってきませんか?むしろこれくらいなら既にやっているし、加工機に取り付けた振動や電流値の情報までも管理しているかもしれませんよね。これは製造IoTの拡張です。
農業の世界でいえば、日照時間とトマトの育成という別々の情報を一つにまとめた
これも上記と同じく農業IoTです。これくらいなら既にやってますよね?なんなら、気温の変化や天候、ハウス内のCO2濃度や土壌のpHの情報までも一元的に管理してるかもしれません。これでも立派な農業IoTです。
なにも大それたシステムを使うことなく、ごく安価で簡単なアプリケーションや手近なExcelでも、現場の足元のIoTを進めるうえでは十分に可能なのです。
さいごに
さて、IoTがどんなもので、どんなことをIoTと呼び、どんな考え方で取り組めば良いのかを製造業を中心に紹介してきました。そこで、実は一番大切なことをさいごに紹介します。
IoTは手段のひとつ
やりたいことは何でしょう?
唐突ではありますが、この問いに対してこれまでの製造IoTの説明を受けて答えるとすると、設備情報の集約や製品情報の連結、材料使用料と不良情報を連結させて歩留まりの算出、といった項目が上がるのではないかと思います。さて、そこで次の質問です。
今、それができていないことで起きている問題は何でしょう?
この問いにはどのように答えるでしょうか。良く言われる「なぜなぜ分析」というのは、現象から理由を辿っていく際に使われる手法なのですが、先ほどの質問はその逆ともいえる、本来の目的を探るための質問として使われます。この質問を1~3回繰り返した先の答えこそ、本来やりたいことであり、解決したい問題であるはずです。
簡単な例で言えば、成形機と付帯設備の情報をIoTで一元管理したいとしましょう。
これができていないことによって起きている問題は、成形不良は成形機の成形条件に起因することがあるが、その加工条件の一つに金型温度があり、金型温度は付帯設備である循環水温調器の状態に依存する。今は、その金型温度管理に関する情報が別々に管理されていて、成形機の成形条件とリンクさせることができない。
と言うのが2次回答となるでしょう。さらにその2次回答に対して、それができていないことによる問題は、
付帯設備である循環水温調器の状態においての異常を検知し、成形機からアラートを発することができれば不良の削減につながる。
という3次回答になります。
つまり、やりたいことは不良の削減なのです。
ここで、不良の削減に対してもう一度考えてみましょう。不良削減の手段はいろいろありますよね。そもそも、不良の原因を分析し、最も効果の高い項目に対してアプローチするべきです。その分析は済んでいますか?付帯設備の情報を取ることがクリティカルですか?IoTが最良の手段ですか?
そう、IoTは、目的を達成するための一つの手段に過ぎないのです。このことを忘れてはいけません。
IoTに踊らされない
世の中を見渡せば煌びやかで華やかなIoTばかりが目に付くようになってきてしまいましたが、製造現場の現実は必ずしもそうではなく足元できちんとやらなければいけない本質的なことがたくさんあるのです。
将来像としてIoT、さらにはAIを活用した現場を描くことは必要でしょう。ただし、その夢のような手段だけに踊らされることなく、目的を理解し、そのために取るべき対策を網羅的にリストアップし、その方策としてIoTが必要であれば導入を検討する。このステップで考えられてはいかがでしょうか。
ちなみに、IoTという手段を導入したら何か変わる、という淡い期待でシステムを導入したところは、結局システムとワークフローが合わなかったり、システムの機能を使いこなせなかったり、ひどい場合には使われなくなったりする製造現場も数多く見てきました。
是非、やりたいことの本質の見極めを行ってからIoT導入の検討を進めてみてください。
「考えたけどわからない」
「どう考えて良いのかわからない」
「考えてる時間もない」
「もうちょっと詳しく教えて」
「うちの業務に例えて教えて」
という方は、是非ご相談ください。(ご相談はこちらから)
IoT関連は製造業に関わらず、あらゆる産業において近年ホットなネタですので、これからもどんどんアップしていきます。
関連記事はこちら>>IoT/M2Mはいいのですが。。。
乞うご期待!
<関連ページ>