中小製造業の業務改善の進め方①~業務棚卸表~

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中小製造業の業務改善の進め方①~業務棚卸表~

中小製造業の業務改善

製造業にとって、売上を生む製品を製造している以外のいわゆる“間接業務”の効率化は、利益を安定的に確保していく上で重要なポイントとなります。この記事では、そうした間接業務の効率化を進める際の進める順番やポイントについて紹介していきます。

進め方は以下の順番です。

YouTubeの動画でも同様の内容を解説しています。ぜひ動画でもご確認ください。

業務見える化のポイント

業務棚卸表の解説をしながら、まずは業務見える化のポイントから見ていきます。「業務を見える化する」と言いますが、見える化するための観点は3つあります。

  • 何の業務を
  • どのくらい
  • 誰がやっているのか

です。アメリカ統計学者であるウィリアム・エドワーズ・デミング氏は、このような言葉を残しています。

定義できないものは管理できない

管理できないものは測定できない

測定できないものは改善できない

つまり、改善するためには改善の対象業務を定量的に測定しなければならないし、改善の対象業務を定量的に測定するためには、その改善の対象業務を管理しなければならないし、改善の対象業務を管理するためには、その改善の対象業務を定義しなければならない、ということです。

業務棚卸表を作成することで、その業務を何と呼ぶのかを定義し、その定義された業務がどのくらいの頻度で行われていて、誰がその業務をしているのかを管理できますし、業務にかかる時間という定量的な測定をすることができます。業務棚卸表は、間接業務の業務改善には必須のアイテムと言えるでしょう。

それでは、何の業務を、どのくらい、誰がやっているのかを棚卸していく際のポイントをそれぞれ具体的に見ていきます。

何の業務を

業務改善

業務を書き出すときには、おおよそ大分類・中分類の2階層で書き出すようにします。大分類では、

「要するにどういうことをやっているんですか?」

という問いかけに答えるようなイメージの内容を書き出します。例えば、顧客対応業務、営業事務などのようなものです。

次に中分類では、「それぞれもう少し具体的に言うとどのような業務ですか?」という問いかけに答える内容のレベルで書き出します。例えば、契約関係、請求書関係、納品管理、業務管理などです。

まずはこの大項目と中項目を書き出してみましょう。コツは、あれこれ考えずにとにかく書き出してみることです。きれいに分けられていなくても構いません。あとで修正すれば良いのですから。実際に書き出してみて、「これはこっちかな」「これはあっちに含まれるかな」「だったらこういう予備からの方が良いかな」などと考えながら修正していきます。

大分類・中分類を一通り書き出せたら、次に小分類を書き出していきます。小分類の項目では、

「例えばどんな業務ですか?」

という具体的な作業に関する問いかけに答えるように書き出していきます。例えば、作業工数実績の入力、実績工数からの費用算出など、本当に実務としてどのように手を動かすのかイメージできるレベルでどんどん答えていきます。

先ほどと同じように、大分類、中分水、小分類を追加したり削除したり統合したりしながら仕上げていきます。注意点としては、一発できれいに書くようにしようと思わないことです。私の経験上では一発ではうまく書けません。全体を見ながら、改装を表す言葉がおかしくないか、確認しながら調整していきます。

出来上がりの点数としては、60点であればヨシとしましょう。目的はあくまで業務の改善であって、業務棚卸表を精度高く作成することではありませんから。

どのくらい

さて、業務の定義ができてきたら、それぞれの業務がどのくらいの頻度で行われているのか、数字を明確に書き表していきます。年にどのくらいか、月にどのくらいか、週にどのくらいか、1日どのくらい作業をしているのか、回数を書きます。

ここでのポイントは、同じく厳密になり過ぎないことです。例えば、棚卸作業だったら年に1回かもしれませんし、請求書の作成だったら月に1回かもしれません。

現実的には、毎日の中で不定期にちょこちょこやっていたとしても、本来必要なのはどのくらいかを考えてみると良いでしょう。どれにも含まれないイレギュラーで不定期なものも、おおよその感覚で良いので書いていきましょう。

誰がやっているのか

最後に、それぞれの作業を誰がやっているのかを当てはめていきます。そのときに一つの作業を複数人で行うこともありますので、担当者の名前は項目として一番上に横に並べます。

担当者を後からリストアップするところは重要ポイントの一つです。というのも、担当者を先にリストアップすると「何の業務か」の定義がうまくできなくなります。

日本企業の良くないところの一つに、“人に業務がついている”ことがあります。そうすると、業務間の繋がりや流れや分類が見えにくくなります。業務を改善したいはずなのに、人の業務を引きはがしにかかってしまう印象を与えやすくなったり、人が要らなくなるような方向性で取り組みが進みかねません。

そうなると業務改善に取り組む現場メンバーはモチベーションが上がらず、プロジェクトが頓挫してしまいます。あくまでも、業務を書き出し必要性なども含めて考えながら、最後にその業務に人を当てはめる、というプロセスを守っていただきたいと思います。

そして、それぞれ1回の作業当たり何分やっているのかを入力していきます。ここでも細かく考えすぎないことが重要です。

計算式の入力

ここで、「年間に何分かけているのか」を計算する式を入力していきます。例えば、週1回Aさんが30分、Bさんが20分かけている作業があった場合、入力する式は

=30分(セル参照)×52(週)+20分(セル参照)×52(週)

ですね。

必要に応じて時間(hour)でも計算しておくと、MH(Manhour)で表現することもできます。ここで業務棚卸表がほぼ完成、つまり業務の見える化がほぼ完了です。

業務が見えるようになったら

さて、ここまでで、何の作業が年間どのくらいの時間かかっているのかが見えてきたと思います。そうしたら、特に大きな時間がかかっているものや、1人しか行うことができない作業などの切り口で書く作業の詳細を分析していきます。

業務棚卸表でメンバー全員が同じものを見えるようになっていますので、どの業務改善に取り組んでいくのか、全体感を含めて認識を共有することができます。いよいよ業務改善のスタートラインに立ちました!

この記事をお読みいただいたみなさまも、何の業務を、どのくらい、誰がやっているのかを順に書き出してみて、業務改善をスタートさせてみてください。

おわりに

業務棚卸表の作成は、意外と本人だけでは書き出すことが難しかったりもします。特に意識もせずに当たり前の仕事をしていると思っている場合、なかなか業務の定義の言葉が出てこなかったりします。メンバー間でヒヤリングをし合いながら進めるのも結構ですし、外部の第三者にヒヤリングしてもらって書き出してもらうもの良いでしょう。

お困りの際はぜひご相談ください。

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著者

大原 健佑

出身:長野県長野市 最終学歴:東北大学 工学部 金属工学科 卒
保有資格:中小企業診断士・QMS審査員補/2015 (JRCA登録番号:A22594)(ISO9001審査員資格) ・QC(品質管理)検定1級 ・フォークリフト ・床上操作式クレーン ・玉掛け

ものづくり企業の生産性向上と人財育成を促進する専門家。
「現場が自ら動く!」「現場に任せる!」「業務改善を圧倒的に加速させる!」「技術開発を確実に進める!」をベースに、各ものづくり企業の業務改善プロジェクトに参画し、プロデュースを行っている。