製造業のプロジェクト遂行はPDCAを使うな!

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製造業のプロジェクト遂行はPDCAを使うな!

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「PDCAを回せ!」

いろんな場面でよく耳にする言葉ですが、これには“ワナ”があると思っています。

というのも、

「ちゃんと考えてからやれ!」
「やったことは反省して次に生かせ!」
「やった結果どうだったかをちゃんと検証しろ!」

それぞれを言いたいだけの人が、それっぽく話をしたいがために“PDCA”という言葉を使いたくて言っているだけの場面も見受けられるからです。

また、場合によってはPDCAの手法が合わないことも往々にしてあります。

なのに、無理やりPDCAの枠に当てはめようとしてかえって進みを遅くしている、なんていうことも見かけることがあります。

そこで、今回は私が見てきたPDCAのプロセスが不向きな製造業の「プロジェクト」について、別の進め方を紹介します。

製造業の「プロジェクト」とは

製造業でいうプロジェクトとは、例えば、

・新製品の開発
・稼働率〇〇%達成
・Fコスト削減

など、部門をまたいだりする社を挙げて取り組む業務のことを指します。

企業によっては、

・5Sの徹底
・業務の見える化
・残業時間削減

などかもしれませんね。

プロジェクトには、PDCAが活用できる通常の管理業務とは異なる大きな特徴があります。

それは、

有期的であること

です。

つまり、始まりと終わりが必ずあるんです。

こうした終わりがある業務についてはPDCAは不向きなんですが、これを理解していない上司は、

「PDCAを回せ!」

と平気で言ってしまうのです。

これをお読みの皆さまは、そんな勘違いをしないようにしましょうね!

プロジェクトを進める5つのステップ

ステップ

プロジェクトを進めるためのステップは決まっています。

これは、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)でも提唱されている方法で、ある意味では世界標準です。

ここではPMBOKを詳細に説明することは割愛し、製造業のプロジェクトの中でもわかりやすい5Sの例で、プロジェクトを進める5つのステップを紹介していきます。

5Sに終わりはないとは言いますが、ここではあくまでも終わりのあるプロジェクトとして扱いますのでご了承ください。

ステップ1:立ち上げ

まずはプロジェクトの立ち上げです。

「5Sを気合い入れてやるぞ!」

ってことですね。

ここでのポイントは、プロジェクトのオーナーマネージャーを明確に決めることです。

ありがちなのは、

「5Sやるぞ!」
「じゃああとよろしく!」

と上司が言いっぱなしになることです。

そうではなく、ちゃんと責任を取れる人がこのプロジェクトのオーナーとなり、その責任を負うとともに、権限を有することが重要です。

工場の5Sというのであれば、オーナーは工場長、マネージャーは課長あたりが良いでしょう。

プロジェクトを進めるための障害があった場合にも、他の業務との調整をしたり遅らせたりするなどの権限の在りかを明確にすることが大切になります。

ステップ2:計画

さて、プロジェクトを立ち上げたら計画に移ります。

この計画がプロジェクトマネジメントの肝ともいうべきプロセスです。

日本にも“段取り八分”なんていう言葉もありますが、この計画で如何に綿密にいろんなことを想定できるかが大切になってきます。

計画の段階で特に重要な要素についてまずは紹介します。

・プロジェクトの目的の確認
・スコープ(対象とする範囲, どこまで考えるか)定義
・体制(内部, 外部、誰がやるのか)
・リスク(進められない, 遅れるリスクはどんなことが考えられるか、そのときどうするか)
・ステークホルダー(利害関係者は誰か)

このように箇条書きにすると、

「あ~、これはっきりさせとかなかったから、あとでこんなことになったわ!」

というような項目が含まれていませんか?

5Sプロジェクトで言うと、

・何のために5Sやるの?
・どこをやるの?
・誰が、どの部署の人がやるの?
・できないときはどんな時がある?
・5S進めるときに関係してくる人ってどういう人?

ってことですね。

また、具体的な作業(タスク)の洗い出しとそのスケジュールを立てるのですが、これにはWBS(Work Breakdown Structure)という手法を用います。

このWBSについては、製造業の人に合った表現でまた別途解説しますね!

そして計画において最も重要なこと、それは、

計画の承認

です。

マネージャー、オーナーは、この計画を承認します。

承認ということは、この計画に対する責任が生じ、この計画通りにやってもうまくいかないのであればそれはオーナーの責任、そして、あらかじめ予測していたリスクに対しては、計画実行のための権限を行使することになります。

ここで、上司の言いっぱなしを避けるわけです。

ステップ3:実行

実行の段階まで来たら、計画段階で作成した計画(WBS)に沿って淡々と作業を遂行するだけです。

実行そのものに特にコツやポイントはありません。

強いて言うなら、まさに「計画した作業を淡々とこなす」ことです。

・計画したように不要品を捨てる
・計画したようにものを並べ直す
・計画したように掃除する

まずは、計画したとおりにやることです。

ステップ4:監視・コントロール

さて、実行の段階と並行して、プロジェクトが計画通りに進んでいるのかを監視しなくてはいけません。

計画した作業が、計画した期日になされているか、常に監視が必要です。

・ちゃんといらないものが捨てられたか
・物の並べ替えが予定の日に終わっているか
・掃除を予定通りにやっているか

などです。

また、計画したとおりに進めようとしても、どうしてもイレギュラーなことが起こります。

その際に、どのようにリカバリーするのか、計画を修正する必要はないか、必要であれば計画を修正します。

・整理しようと思っていたものが突然使用することになった
・物を並べ替えようとしたら不要なものがたくさん出てきた
・掃除しようと思ったら別の部署がその部屋を使っていた

などです。

この変更管理は、言葉にするのは簡単なんですが、実際には一番厄介な作業になります。

ここはマネージャーがしっかりと責任を持って行う必要がありますね。

ここさえも丸投げする課長はダメダメです(笑)

ステップ5:終結

最後、プロジェクトの終わり方です。

これまでの経験則では、この終わり方がヘタクソな企業が実に多いです!

期限が来たからただ終わった、いつの間にか終わってた、だんだん萎んでいって消えたetc…

せっかくやってきた活動を“無”にする終わり方をしてしまっている企業が本当に多いんですね。

終結段階でのポイントは、

・やったことを振り返る
・やれなかったことを振り返る
・次にやるときはどうしたら良いのかを考える

早い話が、ちゃんと反省するってことですね。

・5Sのビフォーアフターはどんな変化があったか
・掃除しきれなかったところはどこか
・来年5Sのプロジェクトをもう一度やるならどんなやり方をするか

せっかくプロジェクトとして取り組んできたことなのですから、きちんと反省して次に生かしましょう。

ここを言いたくて「PDCAを回せ!」って言っちゃい人が多いのも事実ですが。。

おわりに

完了

いかがでしたでしょうか?

始まりと終わりがあるプロジェクトに対しては、言いなれたPDCAに無理やり当てはめることなく、きちんとここで紹介した5つのステップを踏んでやられるといいでしょう。

そして、プロジェクトのやり方そのものを反省し、自社プロジェクトの遂行の方法をブラッシュアップしていっていただければ、どんなプロジェクトだろうがうまくいくでしょう!

「自分の会社の場合は何がプロジェクトに相当するの?」
「このプロジェクトの場合、どうやって計画立てたらいいの?」

など、個別の質問も随時こちらで受け付けています!

新商品・新サービスの開発やIT導入など、プロジェクトの遂行能力が今後の業績の大きなカギを握る時代になってきました。

ぜひ、ご参考になさってください!

著者

大原 健佑

出身:長野県長野市 最終学歴:東北大学 工学部 金属工学科 卒
保有資格:中小企業診断士・QMS審査員補/2015 (JRCA登録番号:A22594)(ISO9001審査員資格) ・QC(品質管理)検定1級 ・フォークリフト ・床上操作式クレーン ・玉掛け

ものづくり企業の生産性向上と人財育成を促進する専門家。
「現場が自ら動く!」「現場に任せる!」「業務改善を圧倒的に加速させる!」「技術開発を確実に進める!」をベースに、各ものづくり企業の業務改善プロジェクトに参画し、プロデュースを行っている。