問題を解決しようと努力しても成果が出ない。そんなとき、どう考えて、何を実行すればいいのでしょうか?
やみくもに努力して期待された成果を出せるほど、多くの製造業の状況は甘くはないでしょう。
事実、問題解決が上手な現場と、下手な現場があります。そして、問題解決が上手な現場には、問題の再定義が得意な現場リーダーがいます。
この記事では、「正しい課題設定に必要なのは、問題の“再定義”である」という視点から、課題形成の本質について考察し、問題に直面したとき、優れた現場リーダーは何をやっているのかを解説します。
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なぜ、問題解決が苦手なリーダーが生まれるのか、というテーマについては「まじめな現場リーダーほど「与えられた問題」の罠にはまる」をお読みください。。
目次
多くの現場リーダーが陥りがちな罠
たとえば、ある部品メーカーでは「会議が長すぎる」ということが問題視されました。
そこで「よし、会議時間を20%削減しよう」と、会議時間を短縮する解決策が実施されました。
しかし、現場の不満も高まり、手戻りが増えるなど混乱が生まれました。
これは、問題の定義があいまいなまま対応したことによるミスと考えることができます。本質的な問題は「会議が長すぎる」ことではなく「意思決定の遅さ」や「情報共有の不足」だったからかもしれないからです。
このように、与えられた問題をそのまま解決しようとして失敗するケースは数多くあります。
現場リーダーがやるべき3ステップ
次一方、できる現場リーダーは、このように考えます。
「本当に解くべき問題は何か?」
つまり、問題の本質を捉え直すために、問題の再定義をします。
もし効果的に問題を解決したいときは、次の3ステップを意識してください。
- 問題を受け取る:与えられた問題を明確に把握する
- 問題を再定義する:その問題の本質を見極める
- 課題に変換する:その問題を具体的な行動計画に落とし込む
重要なのは、ステップ1から3へ直行せず、必ずステップ2の「問題の再定義」を行うことです。
問題を再定義する4つの具体的方法
現場リーダーとして、あなたが明日から実践できる問題の再定義方法は以下の4つです。
1.現場に立ち、多角的に情報を集める
現場観察(3現主義)です。デスクに座って考えるのではなく、実際の現場を観察し、関係者に話を聞きましょう。「不良が多い」という問題も、現場を見れば「作業手順の中で一部属人化している作業で発生している」「前後の工程に対してタクトタイムが短く確認時間が取れていないため1回当たりの不良発生数が多い」など、不良を発生させてしまう問題と、発生した不良にすぐ気が付くことができない仕組みの問題とに分解できるかもしれません。
2.具体的な数字とデータを集める
「残業が多い」という問題も、「どの部署で」「どの時間帯に」「どの業務で」「何件」発生しているかのデータを集めれば、本質が見えてきます。
数字が明確でない、あいまいな現状からあいまいな理想を目指しても、芯を食った改善はできません。
また、統計データも活用しましょう。数字が物語っていることを正面から見つめてみましょう。
3.問いの立て直しを習慣化する
すぐれた現場リーダーは、常識を疑うことを得意としていて、次のような問いかけを習慣化しています。
「本当にそれが問題なのか?」
「ほかに考えられる原因はないか?」
「この問題は誰にとっての問題か?」
「そもそも、この現象はなぜ起きているのか?」
また、いわゆる「なぜなぜ分析(5 Whys)」も有効です。
問題が起きた理由を「なぜ」と5回問い続けることで、表面的な現象から根本原因に迫ることができます。
例:
1.なぜ納期遅れが起きるのか?→作業が間に合わないから
2.なぜ作業が間に合わないのか?→突発的な修正が入るから
3.なぜ突発的な修正が入るのか?→初期の仕様確認が不十分だから
4.なぜ仕様確認が不十分なのか?→顧客との打ち合わせ時間が短いから
5.なぜ打ち合わせ時間が短いのか?→スケジュール管理に問題があるから
4.チームで問題を見直す
一人で考えるのではなく、チームメンバーと問題を議論しましょう。「この問題の本質は何だと思うか?」と問いかけることで、リアルで多様な視点から問題が見えてきます。
現場リーダーの皆さんは、このような仮説・検証プロセスを取り入れて、問題を正しく捉えてください。そして、せっかくの努力を成果につなげていきましょう。
再定義した問題から具体的な課題へ
問題の本質が見えたら、いよいよ、それらを行動計画(=課題)に落とし込みます。
具体的には、
・具体的かつ測定可能な目標を設定する
・誰が、いつまでに、何をするか、優先順位を含めて明確にする
・チームメンバーに目的と理由を共有する
という作業を行います。
これにより、今までは、
「不良率が高い」→「検査を厳しくしよう!」
などと、的外れで意味のない問題解決策を打ち出していた現場でも、
「不良率が高い」という問題の本質を「特定工程における設備の老朽化による精度低下」と再定義し、「来月末までに設備Xの精度を○○%向上させる」という何をやるべきかが明確、かつ成果につながる課題に変えることができます。
問題の再定義を行うことで、課題の本質にぐっと近づくことができるのです。
明日からあなたができること
現場リーダーとして、あなたが問題に直面したとき、すぐに解決しようとするのではなく、まず立ち止まって問いかけてみましょう。
「この問題の本質は何か」
「本当に解決すべきことは何か」
「データや現場の声は何を語っているか」
「何を目的にすべきか」
問題→再定義→課題化という新しいアプローチを実践することで、あなたの現場はより効果的に問題を解決できるようになります。明日から、与えられた問題をそのまま解くのではなく、一度立ち止まって本質を見極める習慣をつけてください。
問題を再定義するための知見と客観的な視点を提供します
正しく問い直す力。問題を深く見る力。そのスキルが、貴社の未来を変える第一歩となりますが、一人で悶々と考えていただけではその力を養うことは難しいかもしれません。
自走して考えられる現場リーダーもいるでしょう。
しかし、伴走してくれる人がいることで、能力を開花させる現場リーダーもいます。
弊社では、正しい課題設定の支援も行っています。取り組んでいる問題解決方法が正しいのか、従業員に問題の再定義について教えたい、などの希望がございましたら、遠慮なくお問い合わせください。
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