製造業の革新的技術!中小企業でもできる図面から自動で見積もりを出すAI

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製造業の革新的技術!中小企業でもできる図面から自動で見積もりを出すAI

aiで見積もり

この記事では、金属やプラスチックなどの部品加工をする企業が行う“見積もり”について、AI化の事例と研究開発の取り組み方を紹介します。100%ではなくてもAI技術を活用することで大幅な工数削減を実現し、属人化の脱却を促進します。ぜひご参考になさってください。

関連記事:製造業を支えるAI予知保全~AI活用と導入の事例~

はじめに:AI自動見積もり技術の必要性とその効果

近年、製造業界はますますの効率化と精度の向上が求められています。特に見積もり作業は、時間がかかり、経験豊富な専門家に依存することが多く、その結果、業務の属人化が進んでいる企業も多くあります。この問題を解決するために、AI技術を活用した自動見積もりシステムが注目され、研究がされてきています。この技術は、図面から直接、必要な材料費や加工コストを計算し、見積もりを自動生成することが可能になるものです。これにより、見積もりの時間短縮と精度の向上が期待されています。

この自動見積もりAIシステムは、製造業における大きな変革をもたらす可能性を秘めています。従来、人手に頼っていた見積もりプロセスを自動化することで、属人化を解消し、より迅速で正確な見積もりを提供することができます。さらに、このシステムを導入することで、見積もりにかかっていた時間を他の業務に充てることが可能となり、全体的な生産性の向上に寄与します。

期待できる効果を具体的に見てみましょう。

時間の短縮

自動見積もりAIシステムにより、見積もりにかかる時間が大幅に削減されます。たとえば、この記事内でも紹介しますが、ある企業では見積もりの回答時間が1時間から20分に短縮されました。これは66%の時間短縮に相当します。

属人化の解消

見積もりプロセスがAIによって自動化されることで、特定の個人に依存することなく、誰でも見積もりが行えるようになります。これにより、業務の透明性が増し、人材の柔軟な運用が可能となります。

精度の向上

AIは過去の大量のデータから学習するため、従来の経験や勘に頼る方法よりもバラつきが少なく、一貫性と精度が保たれた見積もりを提供することができます。

このように、AI自動見積もり技術は、製造業における見積もりプロセスの革新を促進し、企業の効率化と競争力強化に貢献する重要な技術です。次世代の製造業をリードするためにも、この技術の導入を検討する価値は非常に大きいと言えるでしょう。

自動見積もりAIのメカニズム

自動見積もり

AIとはいっても、「なんだかよく分からないけど自動で考えてくれる」という魔法のようなものではありません。ここでは、自動で見積もりを行うAIのメカニズムについて、図面データの読み取り方法とAIモデルの見積もりへの応用について紹介し、その効果についても考えてみます。

図面データの読み取り方法

自動見積もりAIシステムは、改めて言うまでもなく製造業において図面を基にした見積もりを自動化する技術です。このシステムは、まずCADなどの図面ファイルから必要なデータを読み取ることから始まります。読み取りには、画像認識技術や機械学習アルゴリズムが用いられ、図面に描かれた寸法、材質、加工必要部分などの情報を自動的に識別します。

このプロセスには、最先端のOCR(Optical Character Recognition)技術が活用されており、図面上の文字や数字だけでなく、形状や線の種類までをも精密に読み取ることが可能です。これにより、従来人の手によって行われていた時間のかかるデータ入力作業を短時間で、かつミスなく完了させることができます。

3DCADデータだけでなく、2DCADデータも読み取り可能ですし、ルールに則って書かれたものであれば紙図面でも対応が可能です。

AIモデルの見積もりへの応用

読み取ったデータは次に、AIモデルによって解析され、見積もり計算へと進みます。AIモデルは、過去の見積もりデータとその結果から学習しており、新しい図面データに基づいて材料費、加工費、必要時間などのコストを瞬時に算出します。この学習プロセスには、ディープラーニングや統計的予測モデルが用いられ、常にデータベースを更新することで精度は向上していきます。

AIモデルはただ単にコストを計算するだけではなく、リスク評価や効率的な生産プロセスの提案も行うこともできます。たとえば、材料の種類によるコスト変動や、特定の加工方法による時間短縮など、製造過程の最適化提案も可能です。このようにAIは、見積もりを単なる数字の提示から、戦略的な意思決定支援ツールへと進化させています。

ただし、そうした情報も合わせてデータベース化してAIモデルに学習させていく必要があることには留意が必要です。

時間短縮と精度向上の実現

自動見積もりAIシステムの導入により、最も顕著な効果は時間の短縮です。AIによる自動化によって、見積もりにかかる時間を従来の1/3以下に削減することが可能です。これにより、営業やエンジニアリングの担当者はより多くの時間を他の重要な作業に充てることができ、全体の生産性が向上します。

また、AIモデルの持つ一貫性と精度によって、見積もりの品質も向上します。従来、人に依存していた見積もりは経験や個人の判断によるバラつきがありましたが、AIを用いることで常に一定の基準に基づいた見積もりを提供することが可能になり、誤算による損失リスクを大幅に軽減します。

このように、自動見積もりAI技術は、製造業におけるコスト計算、リスク管理、生産効率の向上に革命をもたらす可能性を秘めています。これからの製造業では、この技術をいかに活用していくかが、競争力を左右する重要な要素となるでしょう。

効果に関する注意点としては、「全自動にはならない」「100%の工数削減にはならない」ことです。完璧を目指すとそれだけシステムも複雑になりますし、例外も含めた完璧はあり得ません。100%でないことを容認しながら進める必要があります。

導入事例の紹介:株式会社プラポートによるAI自動見積もりシステムの効果

AIの見積もり事例

株式会社プラポートの事例概要

※この事例は弊社の支援事例ではなく経済産業省が公表している事例です。

株式会社プラポートは、プラスチック精密加工を行う企業で、見積もりプロセスの効率化を目的として自動見積もりAIシステムを導入しました。従来の見積もりプロセスでは、経験豊富な営業担当者が主に担当しており、見積もり作業がその営業担当者たちに依存していました。これが業務の属人化を生じさせ、効率的な業務展開に大きな障壁となっていました。

自動見積もりAIによる成果

株式会社プラポートで開発した、AIを用いて図面から加工難易度を推定するモデルにより、以下のような成果が得られました。

見積回答時間の短縮

従来の見積もり時間は約1時間かかっていたものが、AI導入後は20分程度に短縮。これは回答時間を約66%削減したことに相当します。

見積作業の属人化解消

AIシステムの導入により、営業担当者だけでなく、他のスタッフも容易に見積もりが可能になりました。これにより、業務の柔軟性が向上し、担当者が不在の際も業務が滞ることなく進行できるようになりました。

売上の拡大と離職率の低下

見積もりの迅速化が受注機会の増加に直結し、結果的に売上の拡大に寄与しました。また、煩雑な見積もり作業からの解放が従業員の満足度を高め、離職率の低下にもつながりました。

具体的な改善点

成果の裏では、導入にあたって以下の改善点に対するチャレンジをしました。

プロセスの標準化と透明性の向上

AIモデルにより、見積もりロジックが明確に定義され、プロセスの透明性が向上。これにより、見積もりの一貫性が保たれ、誤算による損失が減少しました。

データ駆動型の意思決定の促進

AIによるデータ解析が経営判断の質を向上させ、より戦略的なアプローチが可能になりました。

この事例から明らかなように、AI自動見積もりシステムの導入は、製造業における見積もりプロセスを根本から変え、業務効率の大幅な向上を実現する道を開きます。株式会社プラポートの成功事例は、同様の課題を抱える多くの製造業にとって、その可能性と導入へのきっかけを提供してくれます。

自動見積もりAIシステムの導入プロセスと成功のポイント

それでは、実際にどのようにAI導入を進めたのか、そのプロセスを紹介し、成功のポイントを振り返ります。

導入のプロセス:検討から実装、運用までのステップ

AI自動見積もりシステムの導入は、一般的には段階的なアプローチで進めることが推奨されていて、弊社が支援する場合においても基本に忠実に以下の5段階のステップで導入支援を行っています。

STEP1:ニーズと目的の特定

AI導入の目的を明確にし、どの業務プロセスに影響を与えるかを特定します。例えば、見積もりの精度向上、プロセスの加速、属人化の解消など、具体的な目標を設定します。

STEP2:技術的要件と選定

必要な技術とツールを選定します。これには、図面データを解析できるOCR技術や、適切な機械学習モデルの選定が含まれます。

STEP3:プロトタイプの開発と検証(PoC:Proof of Concept)

小規模でプロトタイプを開発し、実際のデータを用いてテストを行います。これにより、理論上の計画が実際の環境で機能するかを検証し、必要な調整を行います。

STEP4:フルスケールでの実装

プロトタイプの検証結果を基に、全業務にわたる実装を進めます。この段階では、システムの統合、ユーザートレーニング、フィードバックの収集が含まれます。

STEP5:継続的な評価と改善

AIシステムは定期的なメンテナンスとアップデートが必要です。実運用を通じて得られるデータとフィードバックを用いて、システムを継続的に最適化します。

STEP2~STEP4は特に費用を必要としますが、弊社では大学と連携することにより、安価に研究開発を進めることが可能です。

導入のための心構えと推進体制の重要性

導入のステップとともに、心構えや組織体制も成否を握る重要なポイントになりますが、具体的にどのように進めるのが良いのかを紹介します。

ポイント①:経営層のコミットメント

AI導入の成功は、経営層の強力な支持とリーダーシップに大きく依存します。目的とビジョンを明確にし、組織全体にその重要性を伝え、プロジェクトへの理解と支援を得ることが不可欠です。

ポイント②:クロスファンクショナルチームの形成

IT専門家、プロセスオーナー、フィールドスタッフなど、異なる部門のメンバーで構成されるチームを形成し、多角的な視点からの入力を確保します。これにより、実装の際の障壁を低減し、よりスムーズな導入が可能となります。

ポイント③:変化への適応と従業員の教育

従業員にAI技術の理解を深めてもらうための研修を実施します。また、変化に対する抵抗を管理し、新しいツールへの適応をサポートすることが重要です。

ポイント④:リスク管理と期待値の設定

すべての新技術と同様に、AI導入にはリスクが伴います。投資回収期間の評価、予期せぬ障害への対処計画を事前に準備することが必要です。

これらのステップと心構えを踏まえ、AI自動見積もりシステムの導入を進めることで、製造業における業務の効率化と精度向上を実現し、競争力を高めることが可能になります。

まとめと提案:AI自動見積もり技術による製造業の革新

製造業のAI活用

いかがでしたでしょうか。

自動見積もりのAI技術は、コスト削減と効率化、意思決定の高速化と精度向上、透明性と追跡可能性の向上など、製造業において単なる効率化を超えた変革をもたらす可能性を秘めています。

導入に向けたアクションプランとして、自社のニーズに最も適合するパートナー選定、従業員へのAI導入に対する理解がまずは重要になりますが、弊社では研究開発や導入後の運用支援だけでなく、計画段階からこうした計画段階からの伴走支援を行っています。

弊社は、一般的なAI研究やITの専門事業者とは異なり、ものづくりの現場の業務を理解できることが大きな特長で、専門家である大学研究室とのコネクタの役割を果たし、AI研究と実装の支援を安価で提供することができます。

新たな技術開発に取り組み、一緒に企業の未来に向かって進みましょう!


著者

大原 健佑

出身:長野県長野市 最終学歴:東北大学 工学部 金属工学科 卒
保有資格:中小企業診断士・QMS審査員補/2015 (JRCA登録番号:A22594)(ISO9001審査員資格) ・QC(品質管理)検定1級 ・フォークリフト ・床上操作式クレーン ・玉掛け

ものづくり企業の生産性向上と人財育成を促進する専門家。
「現場が自ら動く!」「現場に任せる!」「業務改善を圧倒的に加速させる!」「技術開発を確実に進める!」をベースに、各ものづくり企業の業務改善プロジェクトに参画し、プロデュースを行っている。