製造業を支えるAI予知保全~AI活用と導入の事例~

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製造業を支えるAI予知保全~AI活用と導入の事例~

製造業のAI活用

この記事では、製造業でAIを活用する具体的な場面として、予知保全に着目し、そのAIの活用方法と導入ステップについて解説します。製造業において、どんなことに対してどのようにAIを活用して良いのか分からなかった方の参考になれば幸いです。

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はじめに~製造業の予知保全の重要性とAI技術~

製造業において、機械の故障は生産活動に重大な影響を及ぼすことは明白な事実です。突発的な故障によるダウンタイムは、製造ラインの停止を意味し、これが直接的な生産損失につながってしまいます。生産性向上に向けた製造業が直面する最大の課題の一つに、効率的な生産活動を維持しつつ、ダウンタイムを最小限に抑えることがあります。この課題に対処するために、AIによる予知保全技術が注目されています。

AIによる予知保全は、機械のデータをリアルタイムで分析し、故障が発生する前に予兆を検知する技術です。この技術を利用することで、予期せぬダウンタイムを防ぎ、計画的なメンテナンススケジュールを立てることが可能となります。結果として、製造ラインの効率が大幅に向上し、維持管理コストの削減にも寄与します。

予知保全AIの技術は、機械学習と大規模データ分析技術を駆使して、機械や設備から発生するデータ(振動、温度、音などのセンサーデータ)を分析し、故障を事前に予測します。具体的には、過去の故障データと機械の運用データを学習材料として利用し、AIがパターンを学習することで、異常の兆候を捉え、未来の故障時期や部位を予測します。

この技術の導入により、従来の経験則や定期的なチェックでは見逃されがちな問題点を事前に検知できるようになります。また、このAIは常にデータから学び続けるため、予測精度は時間とともに向上していきます。この持続的な学習能力が、製造業でのAI予知保全の効果をさらに高める要因となっています。

製造業での競争が激化し、労働人口の減少や設備の異常を見分けられる技術者の減少もある中、予知保全AIはただのオプションではなく、必要不可欠な技術へと変わりつつあります。

これまでにも、展示会などでは研究は進められているように見ることもできますが、AIが活用できる場面はまだまだ限定的であり、莫大な研究費用も必要でした。

しかしながら、弊社では、大学との連携によって研究費用を可能な限り抑えつつ、必要最小限のクリティカルなAI機能開発を提案することによって企業様特有の状況に合わせた支援をすることができます。

ぜひともお声がけください。

予知保全AIのメリット

AIの予防保全

一般的には、AIは「疲れない」「判断がぶれない」「演算が早い」などのメリットがありますが、予知保全におけるメリットについてもう一段階深く見ていきます。

ダウンタイムの削減と効率化

予知保全AI技術を導入することで最も顕著なメリットの一つが、ダウンタイムの削減です。AIは機械から発するデータをリアルタイムで分析し、故障する前に警告を発します。これにより、計画外の停止が減少し、製造ラインの稼働率と生産性が向上します。計画的なメンテナンススケジュールを立てることができ、突然の機械故障による生産の中断を避けることが可能です。この結果、生産効率が大幅に改善されるだけでなく、生産計画の精度も向上します。

故障リスクの低減と修理コストの削減

AIを搭載した予知保全システムは、故障リスクを大幅に低減します。故障が予測される前にメンテナンスを行うことで、機械の小さな問題が大きな故障へと発展するのを防ぎます。これにより、高価な部品の交換や大規模な修理が必要になる場合の数を減らすことができ、長期的には修理コストの削減につながります。また、保守作業が計画的に行えるため、緊急対応に必要な過剰な人的資源や時間を削減でき、全体の運用コストも低減します。

事例紹介: 株式会社みつわポンプ製作所様の成功事例

こちらの事例は、経済産業省が公表するガイドラインにも掲載されている事例です。

株式会社みつわポンプ製作所は、AI予知保全技術を導入し、ポンプの故障予知に成功しました。同社は、特定のポンプモデルにおいて、故障発生の兆候を9割の正確性で予測することが可能となりました。この技術を用いて、故障の兆候が見られた場合には、事前にメンテナンスを行うことで、ポンプの突然の停止を未然に防ぎます。その結果、顧客への信頼性が向上し、製品の品質保持にも寄与しました。さらに、この予知保全の取り組みにより、顧客との接点を増やし、新たなビジネスモデルへと発展させることができました。この成功事例は、予知保全AI技術が具体的にどのように企業の運用効率を改善し、コストを削減するかを示しています。

AI予知保全技術は、製造業における機械メンテナンスの新たな基準を設け、企業が直面する多くの課題を解決します。故障の予防からコスト削減、効率の向上に至るまで、そのメリットは計り知れません。株式会社みつわポンプ製作所のように、この技術を活用することで、製造プロセスの最適化と持続可能な運用が可能になるのです。

AIの導入プロセスとステップ

AI導入のステップ

それでは、実際に予知保全AIを導入する際のステップを紹介します。

1. 準備段階:目標と要件の定義

まずは、目標の設定として予知保全AIを導入する主な目的を明確に定義します。これには、故障予防、メンテナンスコストの削減、生産効率の向上などが含まれるかもしれません。

そして、どの機械が予知保全AIの対象かを決定し、必要なセンサー装置やデータ収集などの要件を明確にします。

2. データ収集と分析

目標と要件が決まったら、機械に必要なセンサーを設置して、振動、温度、音などのデータを収集します。収集したデータを分析用に整理し、異常があった場合のデータと正常時のデータを区分します。

3. モデルの構築と検証

データが整ってきたらいよいよAIモデルの開発になりますが、収集したデータを使用して、機械学習モデルを構築します。このモデルは機械の状態を予測し、将来の故障を警告するものです。そして、開発したモデルの精度を検証し、必要に応じてパラメータの追加調整を行います。このステージは、モデルが現場の実際の条件に適していることを確認するために重要で、トライ&エラーを繰り返す段階になるでしょう。

4. 実装と運用

AIモデルが確立できてきたら、実際に使用するためにAIモデルを既存の製造システムと統合し、リアルタイムでの監視と警告システム機能を実装します。そして、予知保全AIシステムを稼働させ、その効果を監視します。

5. 継続的な改善とメンテナンス

運用しているAIシステムの性能を定期的に評価し、予測精度を保つために必要な調整を行います。運用から得られるフィードバックを利用して、システムの改善を継続する段階です。これには、新たなデータを使用してモデルを再訓練することも含まれます。

このプロセスを通じて、製造業はAI技術を活用して、不測のダウンタイムを減少させ、全体的な運用効率を向上させることができます。各ステップでの具体的なアクションポイントは、事業の具体的なニーズと技術的な要件に基づいて調整します。

弊社では、全てのステップを伴走するとともに、AIモデルの開発等は大学と連携して実行し、成果を常に共有しながら進める手法を取っていますので、自社でAIモデルの開発や機械学習などの専門的知識を習得する必要はありません。

また、一般企業ではAIモデルの開発に数百万円~数千万円の費用がかかることがありますが、弊社では大学に研究を委託しますので、10分の1程度の費用に抑えることが可能です。

製造業のAI導入における留意点

製造業のAI導入

製造業に従事する方は、もちろんAIの専門家ではないことがほとんどですし、必ずしもAIに詳しくはないと思います。AIを導入する際に注意するべきことについて、チャレンジの観点と導入後の観点でそれぞれ考えてみます。

AI予知保全導入に伴うチャレンジとその克服方法

AIの開発や導入に関するチャレンジ要素と、その克服方法についての考え方を紹介します。

1. 技術的な障壁

技術的なチャレンジ要素としては、予知保全AIを導入する際には、適切なデータ収集、分析、モデル構築のための技術的知識が必要です。データの品質が低かったり、不適切なモデルが選択されたりすると、予測の精度が低下することが挙げられます。

その克服方法として、専門のデータサイエンティストやエンジニアを雇用するか、外部の専門企業と提携して、データ収集からモデルの訓練までを適切に管理し、定期的な技術研修を行い、内部スタッフのスキルアップを図ることが一般的です。

弊社が支援する場合には専門知識を持つ大学と連携しての伴走支援を行いますので、この課題をクリアすることができます。

2. 組織的な抵抗

組織的にもチャレンジの要素があります。新技術の導入はしばしば従業員からの抵抗に遭います。特に、AI技術は「仕事を奪う」と見なされがちで、受け入れがたい場合があったりします。

そんな状況を克服するためには、教育と透明性を重視し、AI技術がどのように業務を支援し、従業員の作業負担を軽減するかを明確に伝えます。従業員が新システムの利点を理解し、技術に対する恐れを減少させるために、実際の使い方や成功事例を共有します。事前に入念にしてく必要があるでしょう。

3. 初期投資の大きさ

費用面でのチャレンジ要素です。予知保全AIシステムの導入には、センサーの設置、データ収集・分析インフラの構築、専門スタッフの雇用など、大きな初期投資が必要です。

弊社が支援する場合においては、大学との連携によって、分析インフラの構築や専門スタッフの雇用の面で大幅なコストダウンが可能です。そして、AI開発および導入の長期的な経済的利益を示し、必要に応じて段階的な導入を検討したり、最初に小規模なパイロットプロジェクトから始めることでリスクを最小限に抑えるなどの、計画立案から伴走支援をしています。

定期的なモニタリングと精度の維持

それでは、AI導入後の注意点についても見ていきます。

1. AIモデルの継続的な評価

AIモデルを定期的に評価し、実際の運用データを用いて異常予知の検出精度を検証する必要があります。モデルのパフォーマンスが低下した場合は、再訓練またはチューニングなどを行います。

2. 取得するデータの品質管理

予測の精度はデータの品質に直接的に大きく影響されます。データ収集のプロセスを定期的に見直し、センサーの故障や異常がないかを確認し、データクレンジング(データ整形)の手順を厳格に遵守します。

3. 技術の進展に対応

AIと機械学習の分野は急速に進化しています。最新の研究や技術を継続的に監視し、可能な場合はシステムのアップグレードや新技術の統合を行う必要も出てくるでしょう。

これらの留意点に注意を払いながら、予知保全AI技術を導入することで、製造業はより効率的かつ経済的な運営を実現できるようになります。

まとめ~製造業がAIを導入し活用するために~

製造業がAIを活用する方法

予知保全AI技術の導入は、製造業において必要不可欠なものになることは上述の通りですが、従来の職人のカンコツによる予防保守や反応保守の方法では見過ごされがちな問題点を、データを基にしたアプローチで解決し、故障のリスクを劇的に減少させることが可能になります。AIは大量のデータから継続的に学習し、故障の予兆を早期に検出することで、予期せぬダウンタイムを防ぎ、製造プロセスの安定性と効率性を向上させます。

AI技術は日進月歩で進化しており、予知保全だけでなく、製造プロセス全体の最適化に貢献する可能性を秘めています。将来的には、AIを活用した自動化、資源の最適配分、エネルギー効率の改善など、さらに多岐にわたる応用が期待されます。企業はこの技術進化を積極的に取り入れ、革新的な製造プロセスを追求することが求められます。

技術の進化に対応するためには、継続的な投資が必要になるでしょう。新たなセンサー技術、データ分析ツール、学習アルゴリズムの開発に対する投資を行い、常に最新の技術を導入することが重要です。また、従業員への教育も同様に重要で、AI技術の理解と適切な運用スキルを身につけるための研修を定期的に実施することが推奨されます。

弊社が支援する場合においては、計画時から導入後の運用やアップデートまでを含めた継続的な伴走支援を行い、なおかつ大学との連携によって投資も最小限に抑えることが可能です。中小企業者小規模事業者での支援事例もあります。

予知保全AIは、製造業にとってただのツールではなく、未来を形作る重要な要素ですので、ぜひ弊社と一緒にチャレンジしましょう!


著者

大原 健佑

出身:長野県長野市 最終学歴:東北大学 工学部 金属工学科 卒
保有資格:中小企業診断士・QMS審査員補/2015 (JRCA登録番号:A22594)(ISO9001審査員資格) ・QC(品質管理)検定1級 ・フォークリフト ・床上操作式クレーン ・玉掛け

ものづくり企業の生産性向上と人財育成を促進する専門家。
「現場が自ら動く!」「現場に任せる!」「業務改善を圧倒的に加速させる!」「技術開発を確実に進める!」をベースに、各ものづくり企業の業務改善プロジェクトに参画し、プロデュースを行っている。