製造業のAI活用は「問題解決」より「問題発見」から|現場改善を早く回す実践方法

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製造業のAI活用は「問題解決」より「問題発見」から|現場改善を早く回す実践方法

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製造業でも、生成AIをはじめとしたAI活用への関心が高まっています。

「うちの会社でもAIを使えないか」
「ChatGPTを導入したら何ができるのか」
「AIで人手不足を解消できないか」

こうした相談を受ける機会も増えてきました。

しかし、製造現場でAIを活用するときに最初に考えるべきことは、「どのAIを導入するか」ではありません。

大切なのは、

AIを使って、現場で何を判断できるようにしたいのか

を明確にすることです。

さらに言えば、私は製造業におけるAIの大きな価値は、単に問題を解決することではなく、

「現場で起きている問題に、早く気づけるようにすること」

にあると考えています。

今回は、製造現場でAIを活用するときの考え方について、工程改善や需要予測の事例も交えながら解説します。

製造業におけるAIの問題解決型活用と問題発見型活用の違い

AIを導入すること自体を目的にしてはいけない

AI活用というと、

「この作業をAIで自動化しよう」

「人がやっている仕事をAIに置き換えよう」

と考えがちです。

もちろん、自動化や省力化もAI活用の一つです。

しかし、製造業においてAIを導入する本来の目的は、AIを使うことそのものではありません。

私が重要だと考えているのは、次の3点です。

  • 問題に早く気づけるようにする
  • 人の判断を補助する
  • 小さく始める

特に重要なのが、「人の判断を補助する」という考え方です。

AIにすべてを任せるのではありません。

データを整理する。

異常の可能性を洗い出す。

改善案の候補を出す。

需要予測の候補を出す。

こうした判断材料をAIに整理してもらい、その情報を見ながら最後は人が判断します。

つまり、

データ → AIが整理 → 人が判断 → 現場が改善する

という流れです。

製造現場では、このような「人を助けるAI」の使い方が現実的だと考えています。

製造業でAIがデータを整理し人が判断して現場改善につなげる流れ

生成AIを工程改善で具体的にどう使うのかについては、こちらの記事でも実例を紹介しています。

製造業ではAIをこう使え!~AIを制する者はものづくりを制す~

AIは「問題を解決する」より「問題を発見する」ために使う

製造業では以前から、ITシステムやIoT、AIなど、さまざまなツールが導入されてきました。

その際によく聞くのが、

「作業を効率化したい」

「人の作業を減らしたい」

「この問題をAIで解決したい」

という話です。

もちろん、それ自体は間違いではありません。

しかし私は、それだけでは少しもったいないと思っています。

AIやITの大きな価値は、

問題を早く発見できること

にあります。

例えば、

「今月は思ったより原価が高かった」

と月末になって気づいたとします。

月末になってから原因を調べると、

「あの日、機械が止まっていた」

「不良が多かった」

「作業時間がいつもより長かった」

と過去を振り返らなければなりません。

これでは対応がどうしても後手に回ります。

一方で、

「今日、この工程の作業時間が標準より長い」

とその日のうちに分かったらどうでしょうか。

まだ問題が小さいうちに原因を確認できます。

設備なのか。

作業方法なのか。

材料なのか。

作業者による違いなのか。

早く気づけば、それだけ選べる打ち手も多くなります。

つまりAIを活用して、

月末に分かっていた問題を、今日分かるようにする。

これだけでも、現場改善のスピードは大きく変わります。

「見える化」と「モニタリング」は違う

ここで重要になるのが、現場の「見える化」です。

ただし、私は**「見える化」と「モニタリング」は分けて考えた方がよい**と思っています。

工場に大きなモニターを設置して、

  • 生産数量
  • 稼働率
  • 作業時間
  • 不良数
  • 設備の状態

などがリアルタイムに表示されている。

一見すると、とてもDXが進んでいるように見えます。

しかし、その画面を見た人が、

「これは良い状態なのか、悪い状態なのか」

「どこに問題があるのか」

「次に何をすればいいのか」

を判断できなければ、単に数字を眺めているだけです。

これがモニタリングです。

一方、見える化とは、

問題が浮かび上がり、次の判断や行動につながる形で数字を見せること

だと私は考えています。

「モニタリング」と「見える化」の違い

モニタリング見える化
数字が見える問題が見える
状態が分かる良否が分かる
人が読み解く異常が浮かぶ
見て終わることもある次の行動につながる

IoTを導入して数字を表示するだけでは改善につながらない、という点についてはこちらでも詳しく解説しています。

IoTで見える化してもダメ!?製造業の真の問題解決とは?

「AIありき」ではなく「判断」から逆算する

製造業のDXやAI導入でよくある失敗が、

「このAIがすごそうだから使ってみよう」

「このシステムを導入すれば何かできそうだ」

というツール起点の考え方です。

この順番では、うまくいかないことがあります。

例えばAIを導入して、たくさんのデータを集計できるようになった。

ところが、

「この数字を見て何を判断すればいいんだろう?」

となってしまう。

これではAIを導入した意味がありません。

順番は逆です。

①何を判断したいのか

②そのために何を見るのか

③そのためにどんなデータが必要なのか

④そのデータを整理・分析するために何のツールを使うのか

この順番で考えます。

製造業でAIを導入する際の判断からデータとツールへ逆算する手順

これはAIだけの話ではありません。

RPAやDXでも、「ツールを入れること」が先になると、本来なくすべきムダな業務まで自動化してしまう場合があります。

製造業DXの落とし穴|RPA導入が「ムダの自動化」になっていませんか?

例えば、

「明日、何個製造するか決めたい」

のであれば、その判断に必要なのは何かを考えます。

曜日別の販売数なのか。

直近1週間の販売傾向なのか。

天候なのか。

気温なのか。

近隣イベントなのか。

特売の有無なのか。

判断したいことが決まれば、必要なデータも見えてきます。

その段階になって初めて、

「では、この情報をAIに整理してもらおう」

となるのです。

事例① 工程を分解すると「見えていなかったロス」が見えてくる

ある食品製造会社で、生産管理について一緒に考えたことがあります。

最初は「生産管理をしたい」という相談でした。

しかし現場を見てみると、それ以前に、

製造工程そのものが十分に整理されていない

という状態でした。

そこでまず取り組んだのが、工程を図にすることです。

原料準備。
生地づくり。
成形。
焼成。
冷却。
包装。
検査。
出荷。

このように工程を分け、

「それぞれの工程で何を管理すればよいのか」

を整理していきました。

例えば、

  • 標準作業時間
  • 実際の作業時間
  • 生産数量
  • 廃棄数
  • 停止時間
  • 作業中に気づいたこと

などです。

難しいシステムを使ったわけではありません。

工程の図そのものはExcelなどでも十分描けます。

ところが、こうして全体を図にしてみると、普段は自分の担当工程しか見ていなかった人たちにも、製造全体の流れが見えるようになります。

そしてデータを工程ごとに比較すると、

「この工程だけ標準時間との差が大きい」
「ここで停止時間が多い」
「この工程で廃棄が多い」

といった問題が見えてきます。

ここでAIを使います。

工程とデータをAIに渡して、

「管理すべきポイントはどこか」
「異常の可能性はどこにあるか」
「改善の優先順位を整理してほしい」

といった形で分析させます。

AIの回答をそのまま採用する必要はありません。

重要なのは、

人が考えるための叩き台をAIに作ってもらうこと

です。

人がすべてのデータを集計して、比較して、グラフを作って、原因を考えるのは大変です。

その手前までAIに整理してもらえば、人は「では、どこから改善するか」という本来の判断に時間を使えるようになります。

工程をどのように区切り、どこを見るかについては、AIを使う以前に重要な考え方です。

正しい工程管理から見直す生産管理の勘どころ

生産数量だけを見ていてもロスは分からない

工程管理では、単に「何個作ったか」だけを見ていてはいけません。

例えば、

「1日に6,000個作れる工場」

があったとします。

毎日6,000個作っているのであれば、一見すると安定しているように見えます。

しかし、

ある日は14時に終わる。

別の日は16時までかかる。

同じ6,000個でも、2時間の差があります。

そこには何らかのロスがあるはずです。

あるいは、いつもと同じ時間働いているのに5,800個しかできなかったのであれば、やはりどこかでロスが発生しています。

生産数量だけでは、その違いは見えません。

そこで、

数量 × 時間 × 工程

という視点で見る必要があります。

標準と実績との差が見えるようになれば、

「どこを改善すべきか」

を現場で考えられるようになります。

同じ6000個の生産でも終了時間が違えば生産性が異なることを示す図

事例② AIによる需要予測も「決めてもらう」のではなく「判断材料を出してもらう」

AIの活用は工程改善だけではありません。

食品製造業などでは、需要予測にも活用できます。

食パンやサンドイッチなど、毎日製造して販売する商品では、

作りすぎれば廃棄になります。

少なすぎれば欠品します。

このバランスを取るのは簡単ではありません。

従来は、

「去年の同じ曜日はこれくらいだった」
「今日は暑いから少ないかもしれない」
「前にイベントがあった日はよく売れた」

といった経験や記憶をもとに、担当者が製造数を決めていた会社もあるでしょう。

こうした判断にAIを使うことができます。

例えば、

  • 過去の販売数
  • 曜日
  • 天気
  • 気温
  • 直近の販売傾向
  • 特売の有無
  • 近隣イベント

などの情報をもとに、

「明日の製造数の候補を出してください」

と依頼します。

ただし、ここでもAIに最終決定を任せるわけではありません。

ポイントは、

製造数の候補だけでなく、その理由とリスクも出してもらうこと

です。

「なぜこの数量なのか」
「予測が外れるとしたらどんな場合か」

まで整理してもらう。

その情報と担当者自身の経験を合わせて、最後は人が決めます。

販売実績や天気などをAIが分析し製造数候補と理由を出して人が判断する需要予測

こうすればAIは、ベテランの判断を奪うものではなく、

ベテランの判断を支える道具

になります。

さらに、予測と実績を残していけば、

「なぜ外れたのか」
「次回は何を見ればよいのか」

という振り返りもしやすくなります。

需要予測AIについて、より本格的な導入方法や生産計画との関係を知りたい方はこちらもご覧ください。

製造業における需要予測AIからの生産管理のすすめ~生産計画を精度アップ!~

人手不足だからこそ「判断」と「改善」にAIを使う

現在、多くの製造業が人手不足に直面しています。

しかし、人手不足の問題は単純に「作業する人が足りない」ことだけではありません。

私はむしろ、

判断と改善の余力がなくなること

が大きな問題だと考えています。

日常業務を回すだけで精一杯になる。

すると、

  • 判断が一部のベテランに集中する
  • 改善活動まで手が回らない
  • 「あの人がいないと分からない」仕事が増える
  • 問題が起きても後回しになる

ということが起こります。

そして、それが属人化や生産性低下につながっていきます。

だからこそ、AIを「人を減らすための道具」とだけ考えるのではなく、

限られた人数で、判断の質とスピードを上げるための道具

として考えてみてほしいと思います。

デジタル人材は「現場を知っている人」から育てる

DXを進めると、「デジタル人材がいない」という話もよく聞きます。

しかし、中小製造業の場合、必ずしも外部からITの専門家を採用することだけが答えではありません。

ITに詳しい人が外から入っても、その会社独自の工程や設備、品質、ロスの構造を理解するまでには時間がかかります。

一方、今すでに会社で働いている人たちは、現場を知っています。

どこで問題が起きやすいのか。

どの作業が大変なのか。

どこにムダがありそうなのか。

そうした感覚をすでに持っています。

そこに少しデジタルの考え方を加える。

「現場を知っている人をデジタル人材にする」

という考え方も、中小製造業では重要ではないでしょうか。

全員がAIの専門家になる必要はありません。

まず経営者や現場のリーダー自身がAIを使ってみて、

「これなら、あの仕事で使えそうだ」

と感じられるところから始めれば十分です。

AI活用は小さく始める

AI活用を考え始めると、

「この場合はどうする?」
「こんな例外が出たら?」
「ここまでできないなら意味がないのでは?」

と、どんどん話が大きくなりがちです。

そして、すべてを解決してから始めようとして、結局何もしない。

これは非常にもったいないと思います。

最初から完璧な仕組みを作る必要はありません。

例えば、

1つの製品だけ工程図を描く。

1つの工程だけ作業時間を記録する。

1種類の商品だけ需要予測を試す。

1回の改善会議だけAIに分析させてみる。

そのくらいでも構いません。

実際に使ってみると、

「ここにも使えそうだ」
「このデータも取った方がいい」
「この仕事は人がやるべきだ」

と次の課題が見えてきます。

AI活用では、

考え尽くしてから始めるのではなく、小さく始めながら考える

という進め方が重要です。

まとめ|AIで「改善できる現場」をつくる

製造業におけるAI活用というと、自動化や省人化に目が向きがちです。

しかしAIには、もっと身近な使い方があります。

それが、

現場の問題を早く見つけ、人の判断を助けること

です。

問題に早く気づけば、小さいうちに手を打つことができます。

AIにデータを整理してもらえば、人は原因を考えたり、改善策を決めたりすることに時間を使えます。

そして、

データ → AIが整理 → 人が判断 → 現場が改善する

という仕組みを社内に残すことができれば、一度問題を解決して終わりではなく、現場自身が継続的に改善できるようになります。

そのために、いきなり高価なシステムを導入する必要はありません。

まずは現場のメンバーと一緒に、製造工程を一枚の図に描いてみる。

そして、

「この工程では何を見たらいいだろう」

「どこにロスがありそうだろう」

「どんなデータを取れば判断できるだろう」

と話してみてください。

そこまでできれば、その情報をAIに渡して、

「どこから改善したらよいか」

と聞いてみるだけでも、最初の一歩になります。

AIを導入することが目的ではありません。

問題に早く気づき、判断を早め、現場の改善を前に進める。

製造業では、そんなAI活用から始めてみてはいかがでしょうか。

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著者

大原 健佑

出身:長野県長野市 最終学歴:東北大学 工学部 金属工学科 卒
保有資格:中小企業診断士・QMS審査員補/2015 (JRCA登録番号:A22594)(ISO9001審査員資格) ・QC(品質管理)検定1級 ・フォークリフト ・床上操作式クレーン ・玉掛け

ものづくり企業の生産性向上と人財育成を促進する専門家。
「現場が自ら動く!」「現場に任せる!」「業務改善を圧倒的に加速させる!」「技術開発を確実に進める!」をベースに、各ものづくり企業の業務改善プロジェクトに参画し、プロデュースを行っている。